【d!】八尺の歩幅【企画短編集】 (ページ19)

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【ci】夕照らす、赤い部屋/Dear ページ19

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ぽた、ポタ、ぽた

外は灯点し頃、少し不気味な空の色は家中を薄暗い朱色に塗り潰す

｢…ぁ、あ｣

聞き慣れた夕方の放送が小さく耳に入る、もうそんな時間なんだ。やっぱり時間が経つのは早いなぁ

｢〜っ！！！！！！｣

ポタ、ぽた

頭に何かがずっと垂れてる、雨漏りかな？ここは1階だから…2階から漏れてるのかな。やだなぁ新築の筈なのに雨漏りなんて…

｢あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！｣

ずっとこの冷たい雫に当たって寒くなったのか喉が痛くなってきた、風邪引いちゃったかな

『ぽ、？』

凄く寒い、今は夏真っ盛りの筈なのに。あ、でも最近は少し肌寒い日ばっかりだったかも、夜になったら冷える日が今年は多い気がする。毛布被ってても良いくらいだもん…朝起きたらいつも床にあるけど

｢ぁ、あ、…っぇ゛っ｣

あれ、何だろう。視界が更に赤くなってきた。もう夕日は沈んだと思ったのに、それに何だか鼻が痛くなるような匂いもしてきた。あれ、アレ、あﾚ？

『ぽぽ…ああなんや！ただの現実逃避か！心配して損やった〜
でも可愛いAが見れたから結果オーライってことで！｣

知らない男の明るい声が聞こえた所で、ハッと何となく澱んでいた意識がクリアになる
と同時に溢れ出る涙と、鮮明になる今の状況

｢ひっ、ｧ゛ぁ、あ｣

今も頭から垂れ落ちてる雨漏り、これは雨漏りなんかじゃなくて、天井にベッタリついている血液
夕日に照らされて部屋が赤かったんじゃない、この赤は全て、家族の

｢か、かえして、かえして、やだ、ぁああ、まま、ぱぱ、ああああ、ｧアあぁｱ｣

｢コラコラ、そんな声出しとったら喉が枯れてまう｣

ひょいと軽々私を持ち上げ、胡座をかいていた男の間に置かれ、喉仏を優しく撫でられる
気持ち悪い感触に身を捩らせてやめて、と声を出そうとするが声が出ない。漏れたのは掠れた息の音だけだった

｢何回も発狂されてもたまったもんやないから、我慢してな。喉痛くなるよりはマシやろ？
因みに俺の名前呼ぶ時だけは声出るで｣

ぴちゃ、と音を鳴らして彼は指で血を掬い、床になぞる様に塗り付ける

｢…ちー、の？っち、の｣

｢うん、うん！ふふっ、それが俺の名前。よしよし、ちゃんと覚えてな？｣

外はすっかり真っ暗闇、それでもこの部屋は依然として夕日が動いていない様に赤かった

(夕暮れ照らす赤い部屋)

(不吉な赤い空がいっそうこの部屋を不気味にする)

(大丈夫、だって俺がついてますから！怖いものなんて何も無い、でしょ？)