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「ごめんね、困らせてごめん。・・・無理させて、ごめん」
「もう、喋んな。」
「ッ・・・!」


今まで聞いたことのない水斗の低い声に、優羽はまた、体をこわばらせる。
次にくる言葉が怖くて顔が青ざめていくのが、優羽自身にもわかった。


「・・・っ。」


呼吸音すら聞きたくなくて、優羽はとっさに目をつむり、耳をふさいだ。

その、瞬間だった。



ぎゅっ・・・


「・・・、へ?」


突然身体へ来た衝撃に、優羽は思わず目を開けた。
その視界に広がったのは、目の前にいたはずの水斗の肩。
そしてその肩越しに見える床には、いつも水斗が着けている手袋が落ちていた。


「、みな」
「ごめん。」


優羽の言葉を遮った消えそうな声は震えていて、肩に感じるぬくもりから、声の主が泣いているんだと優羽は理解した。


「優羽・・・ごめんな・・・。寂しい思いばっかりさせてたんだな。」
「だって、それは仕方がないから・・・。水斗が嫌な思いするくらいなら、僕が我慢したほうがいいって・・・。水斗、無理してこんなことしなくていいんだよ?気持ち悪いでしょ?」
「・・・・・・い。」
「え?」
「お前だから、気持ち悪くなんかない。」


そう言うと、水斗は優羽から体を離し、手袋の着いていない両手で肩をつかんで、正面から優羽を見た。


「優羽、今まで不安にさせてごめん。・・・確かに俺はひどい潔癖症で、人との接触を避けてきた。家族以外のだれかと一緒に暮らすなんて考えもしなかったし、一生ないと思ってた。・・・けど、優羽と出会って変わった。俺のことをちゃんと理解してくれて、・・・こいつとなら大丈夫って、思えた。あぁ、好きだなって。」
「水斗・・・。」
「お前のこと不安にさせといて、今更こんなこと言っても信じてもらえないだろうけど・・・本当は、ずっとお前を抱きしめたかった。」
「・・・え?」
「雷が怖くて、一人で震えてるのもわかってたのに、抱きしめたとき、自分がどうなるのかわからないのが怖くて・・・優羽のほうがよっぽど怖い思いしてるのに、一緒にいてやれなかった。」


優羽の肩に来る痛みが、水斗の真剣さを物語っている。

優羽は水斗の葛藤を初めて知り、こみ上げてくる嬉しさで胸が痛んだ。

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作者名:紅月 | 作成日時:2019年6月9日 10時

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