第四十一話「今宵は月の下で」 ページ43
「え、踊る?」
「退屈なのでしょう?ならば私が貴女を楽しませてあげます。さぁ、私の手を。」
いつもとは少し違う優しい微笑みに、私は戸惑いながらもこの退屈で憂鬱な時間を変えて欲しい。と心のどこかで欲望を呟く。
私は戸惑い震える手を、彼の手の平に乗せる。
「良い子です。」
「ひあっ」
彼は私の手を引き、抱き寄せるように私を引っ張り、すかさず前の様なお姫様抱っこをする。
「口は閉じておいて下さいね。」
そう言って、彼は飛んだのである。
夜空が一気に近くなり、下を見ると遠くなるパーティ会場。条野さんは一体どんな脚力をしているのだろうか。建物の天井や電柱を器用に渡り、あっという間に誰も居ない横浜の夜景や海が一望出来る場所に来ていた。
「会場を出るなんて聞いてないわよ。」
「でも出たかったでしょう?」
「…他の『猟犬』のメンバーは?置いてけぼり?」
「逆にそれでいいのです。面倒を見なくて済む。」
「……私、男性にエスコートなんてされた事ないし、踊る事だって出来ないわよ。脚を踏んじゃうかも。」
「そんな事、私が優しく教えて差し上げますよ。それに、私は貴女に足を一回踏まれています。あんな刺激、痒くもありません。」
条野さんは私をゆっくりと下ろし、掴んでいた私の手の甲に優しくキスをする。
今まで、散々馬鹿にされてきた私だが、今日は今までで一番彼は私に優しく接していると感じる。異常な程に。酒に酔っているのだろうか。
「ど、どうしたの…何か先程から貴方優し過ぎてキモイわよ。」
「心外ですね。本当にこれは素直な気持ちで接しているのですが、お気に召しませんか?」
「どんな貴方もお気に召さないわ。」
またも月の光に照らされる条野さん。その姿はとても綺麗で、彼の整った顔がいつもより解りやすく照らされており、神秘的、と言ったら癪だが、そんな事を感じてしまった。
「…そんなに踊りたいのなら、他の女性と踊れば良いのに。」
「私は貴女と踊りたいのです。」
「変なの。」
私は彼の肩に腕を巻き、彼の顔に私の顔を近付ける。
「エスコート、よろしくお願いしますわ。」
「喜んで。」
第四十二話「この夜を君と踊りあかす」→←第四十話「彼女の未来」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時