第三十九話「原点」 ページ41
社長は申し訳なさそうな声色で私に承諾を求める。面倒臭い。どうせ娘のAさんの事だろう。ちゃんと娘を見る事が出来ないのだろうかと、考える。が、私はそこまで鬼では無い。
「ええ、なんでしょう。」
「私の…娘の事なのですが。」
ああ、やっぱり。きっと話の内容はこうだ。生意気な娘が気に入らない、恥ずかしい。
「Aさんがどうかなさいましたか?」
「その、娘はとても人と付き合う事が苦手でして。本当に貴方様が初めてなんですよ。友人なんて。娘は何か粗相はしておりませんか?」
おっと、予想が外れた。こんなにも成功している会社の社長はきっと傲慢な性格をしていると思っていたが、そんな事は無かった。
「そうらしいですね。Aさんとは出会って一月位しますが、日にちが経っていくにつれて彼女の毒気が抜けていく感じがして、野良猫を育ててるみたいで楽しいです。」
「野良猫…。」
彼女に対して私は恋愛感情を感じてはいない。
彼女に話しかけたのは、その時仕事で入っていた『カルメンの穴あきくつした』という世界的テロリストの討伐に役に立ちそう、事件解決の鍵だと感じたからである。犯人の想い人であると割れていたので、犯人の挑発に良い材料だと適当な感情で接したのが始まりである。
『話がしたいのなら、他を当たれば良いのでは?』
口頭一番で仮に盲人である初対面の人間にそんな毒が一杯含まれた台詞を吐けるのは彼女だけだろうと思った。最初は『ついで』感覚だった。犯人を壊す材料が、こんなにも面白いなんて、と当時はウキウキした。
が、時間が経つにつれて、少しずつ変わっていく彼女に私は興味を抱いたのだろう。今は、『ついで』では無く『本命』である。
「…Aは、昔から人と関係を持つのが苦手でして。ずっと、私達夫婦が申し訳程度であげていた本を読んでいました。
私達は仕事が忙しく、Aに親子らしい事をしてあげられなかったのです。きっと、その所為で…いや、それじゃあAを否定している言い方になる。」
どうやらこのお父様は優しいらしい。自分の所為で彼女は他人と関わりが持てなくなった。関わりがあったらもっと今より良い生活が出来るかもしれないなんて、この人ならば言えないであろう。何とも良い父親を持ったものである。
「彼奴は、先程会社を継ぐと言っていました。」
その台詞に私は適当に彼の相談を聞くのを辞め、耳を澄ます。
「私は、彼奴に会社を継がせる気は無いのです。」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時