第三十七話「よろしくね」 ページ39
「お久しぶりでございます、お父様。」
『猟犬』部隊のパーティの参加に喜ぶお父様に、水を差す様で申し訳ないが、私は頭を下げ挨拶をする。
「おお、来てくれたかA。」
下げている私の頭を髪が崩れないぐらい優しく撫でるお父様。久し振りにお父様に頭を撫でられ、少し恥ずかしく顔がほんのり赤くなった気がした。直ぐに頭を上げ、お父様に軽く微笑む。
「最近はどうだ?大学では上手くやれているか?」
「はい、充実した学園生活を送っております。勉学も、お父様の会社を継げる程まで頑張っている所存でございます。」
「…そうか、そうだな。」
お父様の含みのある表情が私の脳を不安にさせる。何か不味いことを言っただろうか。
「それにしても、何故Aが『猟犬』の皆様と一緒に…?」
そのお父様の疑問にいち早く条野さんは応える。
「ああ、それは私とAさんが友人関係にあるからですよ。」
「友人…!?」
嬉しそうにお父様は条野さんの勢い良く手を掴み、彼の顔を見て「娘をよろしくお願いします!」と言うのである。大勢のお偉いさんの耳に入るぐらいの大きな声で。誤解が生まれるわ。
「お、お父様…、言い方に語弊があり過ぎます。しかも声が大きいです。皆様が此方を見ていますわ…。」
「は、いけない。いきなり手を掴み大きな声を出して、本当に申し訳ございません。なにせ、娘のAが他人と接点を持つなど初めてな事で。つい。」
手を離し、深深とお辞儀するお父様。その光景を見ている他の客に「見世物じゃないぞ。」と言い散らせる他の『猟犬』達。
「お父様、それより他の来賓の方々への挨拶へ回られた方が。」
「ああ、否、挨拶は大方終わったんだ。それに、お前の方で用があるんだ。此方へ来てくれ。」
お父様は私の手を引き、奥の方へ連れて行く。久々に会うお父様は忙しそうでパーティどころではなさそうだ。
条野 side
「…。」
「どうした条野、元気が無いな。このローストビーフ美味いぞ。食べたら元気が出るぞ。」
「誰がバニラアイス付きのローストビーフなんて食べますか。」
私が考え事をしている時にこうやって変な邪魔をしないで頂きたいと常日頃思う。
そう、考え事。私は先程Aさんの「会社を継ぐ。」というワードに何故か魚の骨が喉に突っかかった様な違和感が襲う。なぜ彼女のどうでも良い台詞に私が悩まなければいけないのだろうか。
「…気持ち悪い。」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時