第十九話「二言目」 ページ20
「はぁぁぁ。」
横浜の街を、重たい脚を前に繰り返し出し行きつけの喫茶店迄歩く。
条野さんにまたも命を救われ早一週間。またも彼は喫茶店に現れること無く、消息を絶っている。癪だが、彼の連絡先が欲しい。彼の連絡先さえあれば彼を何時までも待つこと無く何時でもお礼が出来るからである。
あの後、軍警から保護された後見事にあの犯罪集団は逮捕され獄中で泣いている頃だ。色々な書類を書かされ、大学では何時も以上に周りに囲まれあのブス集団にまたも睨み付けられ、挙句の果てにはお父様方の会社の面汚しと本社から苦情メールが来たりと散々である。ゆっくり出来ない。
店の扉が見え、ゆっくりと喫茶店に入る。
「おや、やっと来て下さいましたか。」
「で。」
カウンター席から優雅に珈琲片手に、微笑む彼。
「どうも、Aさん。」
条野さんが、其処に居たのである。
「でぇぇえ!?何故居るのです!!」
「言ったじゃないですか。通うって。」
「いや通う宣言した割には来てませんよ貴方!」
グズり、と鼻を啜る音が聞こえる。涙目で頷く少し怪我したオーナー。オーナーはあの後、集団からちょっとした暴行を受け金庫の金を取られ散々であったが、後日にはケロッと珈琲を淹れていた。
「いやぁ、良かった。また彼女が条野さんと話せている。」
「…。」
私が他者と話さない為こうやって彼とコミュニケーションを取る姿が眩しく見えるのか、サングラスを取り出し顔にかけ、「ささ、どうぞ。」とお気になさらず的な感じで他の客へのデザートを作り出す。
「…お久し振りです、条野さん。仕事はどうです?」
「ええ、手のかかる同僚達以外の事は難無くこなしております。貴女はどうです?」
「散々ですよ。ゆっくりと小説を読む時間も無い。有象無象が群がって気持ち悪い。野垂れ死にすればいいのに。」
「はは、いつも通りですね。」
彼の何時もの様に微笑む顔に私は『お姫様抱っこ』の件を思い出す。
「あの、条野さん。」
「なんです?」
「この間はまた命を救って頂き、ありがとうございました。」
「…いえ、あれは本当に偶然なんです。」
「でも、助けてくれました。」
私は彼の顔を見て、改めて深々とお辞儀する。
「一度ならず二度までも、私を助けてくれて、ありがとうございました!」
「………当初はあんなにも不貞腐れた態度を取っていたのに成長しましたねぇ…。」
「…。」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時