94.ずっと一緒に ページ44
「わあ〜!!」
「おー…」
薄暗い空間の中で魚達は泳ぐ。水槽がドーム型になっていてその中をくぐると魚達を下から見上げることができるようになっていた。光は水槽の上からの極僅かな光だけでキラキラと揺れる水面の反射が何とも幻想的だ。
「夜の海をイメージしてるんだって」
「へー…すげぇな…」
「うん…」
彼女と一緒に上を見上げる。繋がれている手が少し強く握られたように感じ、彼女の方を見ると、彼女の顔が夜の海でも分かるほど赤くなっているのが分かった。
「ここでね、キスしたカップルは…ずっと一緒にいれるんだって…///」
「…っ!///」
何だその誘い方…かわいすぎるだろ…!///
「A…」
彼女の期待に応え、優しく頰を包む。彼女も俺の方
を見上げて目を閉じた。
嬉しかった。彼女がずっと一緒にいたいと思ってくれることが。その気持ちが俺の正体を知っても、変わらないで欲しい。
だって俺はお前を…
「愛してる…A…」
彼女に顔を近づけ唇を寄せる。お互いの息が唇に感じる距離になった…
その時だった。
『パンパカパーン!お集まりの皆さんこんにちわっす!』
急にかかったアナウンス。
スピーカーから聞こえた声に俺は固まった。
嘘だろ…。
『本日来場のお客様に限り特別なショーをお見せするっすよ!とーっても面白いショーを』
館内がざわざわとなりショーを楽しみとする声が聞こえる。
『ショーは館内全体で行われるっす!メインステージはイルカショーゾーンっすよ!だーかーらー…』
何でお前が…。
『兄さんもだーいじな恋人と一緒に来て欲しいっす』
アナウンスから聞こえる不気味な弟の声に、俺は背筋が凍りついた。
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作者名:星歌 | 作成日時:2017年4月30日 10時