【ヘタリア】猫と眉毛

31話 ページ33

フランシスさんにパンを届け終わり店に戻る途中。
アルフレッドが私の左斜めの一歩先に歩いている。


「ねぇ、A。そう言えば俺、Aにのボヌフォワさんの名前教えたっけ。」


足を止めアルフレッドが言う。
きっと彼にとっては何気ない質問なんだろうけど、私にとっては心臓が止まるくらい嫌な質問。

彼が私に背を向けていたことに、こんなにも安堵したことはないだろう。


「何言ってんの、行く前に教えてくれたじゃん。」


私が言う。
アルフレッドは興味なさそうに、そっか、と言ってまた歩き始める。勿論、私の左斜めの一歩先。

背を向けていて、表情がわからない。
だから余計にアルフレッドにこの嘘がばれていないかと不安になった。









「Aはさぁ、なんで嘘つくの。」



もうすぐで店につく、というところでアルフレッドが言う。
今度は体をこちらに向けて足をとめている。

彼の困ったような表情が見える。
私の焦った表情も見られている。


「俺、ボヌフォワさんの下の名前今まで知らなかったんだよね。」


眉を少し下げ、困ったように笑いながらアルフレッドが言う。

暑くも寒くもないこの季節。
一瞬、背中に冷や汗のようなものがつたっていく感覚がした。

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