能あるヒトは爪を隠す4 ページ16
※おついち視点
「っの野郎…！」
激昂した弟者を兄者が制する。
「バカ。ありゃ今Aに夢中になって俺達には気づいてない。…無策で突っ込んだって意味ねえぞ」
「でもっ…！」
「わかってる。合図するまで待て｣
そう。迂闊に手を出せばAちゃんまで危険な目に合わせてしまうかもしれない。それを考えるとおいそれと手を出すことはできなかった。
そう思いながらも、今すぐに駆け寄ってあの生首の脳天を叩き割ってやりたいと思う気持ちが抑えられない。唇をギュッと噛み締めた。
「…ありゃ、生霊だね。しかも、半端なやつ」
「生霊？」
「うん、頭飛蛮じゃない。見て…ほら首が壁の無効に続いてる。あれは肉体に繋がってるんだと思う。………だから、生霊」
言外に、その繋がりを断ってしまえばもう体には戻らないと伝える。
弟者が待ちきれないと言いたげな顔で、兄者を伺った。
『綺麗だねえ、君のその顔も、柔らかい肌も、全部全部僕の、僕の僕の僕の僕だけのモノなんだよ』
「っの野郎…」
あぁ、確かにこれは頭に血が上る。冷静なふりをしているけれど、我慢の限界は近かった。
首は何事かをAちゃんの耳元で呟き続けている。とても不愉快な絵面だった。
『そうそう、いい子だ。その顔の方がずっといい』
恍惚とした表情のそれに、高まった嫌悪が爆発しそうになったその時、ようやくGOサインが出た。
「弟者」
「分かってる」
押し殺された声は殺気を含んで震えている。
1番優しい弟者だからこそ、ここまで耐えられたんだろう。そして弟者が耐えているからこそ、俺も兄者も耐えられた。
弟者が飛び出す。フローリングを踏み抜く破裂音にも似た音がして、彼の拳が首の横面を勢いよく殴り飛ばした。
肉の殴打される湿った音が、キッチンに響く。
「待たせたな」
無理やり笑みの形をなぞった顔で弟者が言う。
「…とじゃ、さ」
床に座り込んで茫然自失といった様子のAちゃんに近付いて羽織っていた上着を被せれば、ゆらりと首が傾いだ。
「せ、せんせ」
「ごめんね、俺がちゃと見ていればよかったのに」
「ちが…先生は悪くなんか」
「約束を守れなかったんだ。俺達に非があるに決まってるだろ」
兄者が俺たちの隣にたって、ぼそりと呟く。
「…っ」
ぶんぶんと首を降る彼女を宥めるように、兄者が頭を何度か撫でていく。
「もう、大丈夫だから」
そんな顔しないで。
俺たちの思いを代弁するように弟者が泣きそうな声でそう言った。
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萩乃 - とってもおもしろかったです！続きが気になりますね！これからも頑張って下さい！応援してます！ (2019年11月10日 14時) (
レス) id: 1860965fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雪丸205(プロフ) - とっても面白かったです！2broだとマフィアや極道ものなどよく見ますが、vs.幽霊は斬新で続きが気になります(* ´ ▽ ` *) (2018年9月10日 17時) (レス) id: ce4c87fa35 (このIDを非表示/違反報告)
鑪ﾁｬｺ(プロフ) - 遠いアフリカの国〜、の表現がこの上なく好きです。参考にさせて頂きますm(_ _)m (2018年8月4日 3時) (レス) id: 10fcfc8c85 (このIDを非表示/違反報告)
工藤蛆虫(プロフ) - しーたけさん» ありがとうございます！！嬉しくなってしまったので更新頑張りますね！ (2018年7月29日 0時) (レス) id: 3cc527ceec (このIDを非表示/違反報告)
しーたけ - 素晴らしい！めっちゃくちゃ面白くて見入っちゃいました！頑張ってください！！ (2018年7月28日 9時) (レス) id: 02fc5e93ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：工藤蛆虫 | 作成日時：2018年7月20日 16時
