能あるヒトは爪を隠す2 ページ14
氷のように冷たいそれは、ひどく重たい。
場違いに人の頭はボーリングくらいの重さだったと聞いたことがあるのを思い出した。
「や、やだ…たすけ」
『来ないよ。気付かないからね』
ねっとりと首がいう。
耳元で反響する声は、嫌悪感を抱かせるには十分すぎるほどだった。
『そんなに彼らに毒されてしまったの？…可哀想に。大丈夫、僕がすぐに元通りにしてあげるからね』
そして、一瞬間を置いて首筋にちくりとした痛みが走る。キッチンの窓に映ったわたしのそこには、赤い花が咲いていた。
「…っ……！」
嫌悪感からか、涙が零れ落ちる。
もはや怖いというよりもこの見ず知らずの生首の好きにされていることが悔しくてならなかった。
『ほぅら、これで君は僕のもの。………君が眠っているあいだ、毎日毎日上書きしてあげていたんだよ。綺麗だろ、赤い色は好きかい？』
毎日毎日…？
思考が固まった。虫刺されだと思っていたこの赤いあとはそんな可愛いものじゃなかったのだ。
途端に自分の身体が薄汚れたものに感じられて、全身から力が抜けた。ふう、と首が息を吹く。それは冷気となって身体を包み込んだ。とたんにぷつ、ぷつと、服の繊維がちぎれていく。
するりとパーカーが背中を伝って床へ滑り落ちた。
直に冷気が触れ、肌が粟立った。
ぺたりと座り込んだわたしに、満足そうな声で首は言う。
『そうそう、いい子だ。その顔の方がずっといい』
「ぁ…あ」
冷たさは思考を鈍らせて、わたしの自由を奪っていく。
目の前が白く、眩んで_______________
「弟者」
「わかってる」
肉を殴りつける鈍い音が、狭苦しいキッチンに響いた。
「待たせたな」
「…とじゃ、さ」
粟立っていた肌に煙草の香りのしみついた大きな上着がかけられる。
「せ、せんせ」
「ごめんね、俺がちゃんと見てればよかったのに」
「ちが…先生は悪くなんか」
「約束を守れなかったんだ。俺たちに非があるにきまってるだろ」
「……っ」
ぶんぶんと首を振る。
違う。
悪いのはわたしなんだ。
「もう、大丈夫だから」
そんな顔をしないで、となぜだか弟者さんが泣きそうな声でそういったのを最後に意識は混濁した。
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萩乃 - とってもおもしろかったです！続きが気になりますね！これからも頑張って下さい！応援してます！ (2019年11月10日 14時) (
レス) id: 1860965fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雪丸205(プロフ) - とっても面白かったです！2broだとマフィアや極道ものなどよく見ますが、vs.幽霊は斬新で続きが気になります(* ´ ▽ ` *) (2018年9月10日 17時) (レス) id: ce4c87fa35 (このIDを非表示/違反報告)
鑪ﾁｬｺ(プロフ) - 遠いアフリカの国〜、の表現がこの上なく好きです。参考にさせて頂きますm(_ _)m (2018年8月4日 3時) (レス) id: 10fcfc8c85 (このIDを非表示/違反報告)
工藤蛆虫(プロフ) - しーたけさん» ありがとうございます！！嬉しくなってしまったので更新頑張りますね！ (2018年7月29日 0時) (レス) id: 3cc527ceec (このIDを非表示/違反報告)
しーたけ - 素晴らしい！めっちゃくちゃ面白くて見入っちゃいました！頑張ってください！！ (2018年7月28日 9時) (レス) id: 02fc5e93ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：工藤蛆虫 | 作成日時：2018年7月20日 16時
