貴方を想うと ページ7
空side
『そう言えば二人は今度スメール、だっけ...そこに行くんだったよな』
失敗してしまった試作品たちを食べながらそう言った。
『しばらくはスメールで過ごすの?』
「そうだね...俺自身やらなくちゃいけないことがあるから」
生き別れの妹を思い浮かべる。
『そっか、そうだよな___じゃあしばらく会えないね』
小さく放ったその言葉が聞こえてしまった。
しばらくとは言うが、どれほど期間になるのか...その間Aはどうしているんだろう。
”作ってあげたい人がいて。降魔大聖って呼ばれてるらしいんだけど...”
「...」
また胸が痛む。
「心配するなよ。やることが済んだら、オイラ達すぐ帰って来るからな!」
そう言ってしょんぼりしていたAの頭を、小さな両手で撫でまわしていた。
『ぱ、パイモン! 別にそこまでしなくていいから...!』
そう言いながらも顔はほんのりと笑みを浮かべている。
かわいいと思った。でもそれは蛍とかに感じるかわいいとは少し違う気がする。
これがなんていう感情なのか、今の俺ではわからなかった。
〜〜〜〜〜
『よし! 杏仁豆腐渡しに行くぞ!』
杏仁豆腐の材料をもって望舒旅館に向かう。
あの夜、甘雨にあの少年仙人にことも聞いた。
璃月の三眼五顕仙人の一人。かつて魔神に囚われの身となった彼を、僕と岩王帝君が救い出したのだという。
空とパイモンの二人が呼んでいた魈と言う名はどうやら真名では無く、帝君が彼に授けた呼び名なんだそうだ。
真名を簡単に教えてはいけない...魔神に囚われていた経験もあっての事なんだろう。
それから、”仙衆夜叉”という存在についても話を聞いた。
戦争で倒れた魔神の残滓から璃月の民を守るために、帝君との契約によって戦っていた五人の夜叉がいたと言う。
しかし、業障に侵されもう彼以外は誰も残っていないそうだ。
”お前も業障に侵されたのかと”、と彼が言っていたのはこのことかと納得した。
一人になった今でも、彼は身体の内から蝕まれるような激しい痛みに苦しみながら戦っている。
『...っ』
あの日のあの苦しそうな顔が頭から離れない。
僕は彼を覚えていない筈なのに...なのに。
(早く旅館に行こう)
どうも苦しかった。
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作者名:むぎのくろた | 作成日時:2022年12月24日 22時