ただ、なんとなく。【孤爪研磨】

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「おい、何やってんだよ！」



「あ、夜久くん！」



後ろを振り向くと、見えたのはボトルを持って走って来る夜久先輩の姿。



「夜久先輩…」



「ボトル、俺渡すの忘れてた」



先ほどの厳しい顔から一転、ニカッと笑ってボトルを差し出す夜久先輩。



「…なーんだ、そこまで有能じゃないマネージャーなわけね」



夜久先輩が来たことで強ばった笑みを浮かべていた先輩も、また笑い顔に戻る。



「…お前らがこいつとどんな関係なのか知らねーけど…こいつのこと侮辱すんじゃねーぞ。

一生懸命やってるやつのこと笑う資格なんて、誰にもねーんだよ」



先輩たちの方を向いて男前な顔をした夜久先輩は、なんとも漢前なセリフを吐いてからゆっくりと私の方を向く。



「…よーしじゃあ、部活戻るか！」



またしても太陽のような笑みを浮かべた夜久先輩は、腰に手を当ててそう言った。



先輩たちはそんな私たちを見て、こちらを睨みつけながら去って行く。



「…あいつらもめんどくせーよなー」



よいしょ、と呟きながらしゃがみこみ、ボトルを集め始めた夜久先輩。



「え、いいですよ、体育館戻っててください」



「そういう訳にもいかねーよ、大変だろ」



「すみません…」



何ともイケメンなセリフを吐き、イケメンに笑った先輩と一緒にボトルを集め、水道へと向かう。



「もう1回スポドリ作るだろ？手伝う」



「えっ、さすがにそこまではいいです、悪いですから」



「俺だって前までやらされてたからさ、こんくらいできるよ」



大切なことなのでもう一度言おう。



夜久先輩は、イケメンである。

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