ただ、なんとなく。【孤爪研磨】

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「ボトル回収しまーす」



日曜日の1日練習。



選手はもちろん、マネージャーも、仕事で大忙し。



正直マネージャーってこんな大変だと思わなかった。



マネージャーって部活やってるっていうのかよ、と思っていた自分が恥ずかしい。



これは、立派な部活だ。



こんなに真面目に部活に取り組めるなんて思ってもいなかったけど、最高に楽しい。



ボトルを洗うために外に出ようとドアに手をかけた。



そのとき、聞こえた。



聞き覚えのあるトランペットの音色。



気持ち悪いほど堂々としているのに、技術なんて欠けらも無い。



そんな演奏。



私がきらいな演奏。



手が、震える。



やめて、うるさい、耳障り



やだ、やだやだやだ、静かにして



もう、やめて＿＿＿＿＿



「…A？どうかした？」



はっとして、顔を上げた。



研磨の声。



聞いていて落ち着く、大好きな声。



知らないうちに目をぎゅっと瞑っていたのか、視界がぼやけて涙が浮かんでいる。



震えていた手はピタリと止まり、何事も無かったように装う。



「いや…なんにも」



「…ならいいけど」



ボトル、と呟きながら私が持つボトルの上へ置く。



「ありがと」



「よろしく」



研磨は去っていく。



ゆっくりと深呼吸をして、もう一度ドアに手をかける。



汚い音色は、もう聞こえなくなっていた。

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