ただ、なんとなく。【孤爪研磨】

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「…え、バレー部のマネージャーやる！？」



翌朝。



燦々と輝く太陽の光が差し込む教室の中で、まるで雷のような声が上がった。



「朝からでかい声出さないでくんない」



「出さないでいられるかい」



そう私をバシっと叩いたのは今泉。



中学時代からの友達だ。



こんな私に5年ほど付き合ってくれている。



まぁ、前に言った”話してて楽しい奴“のことかな。



「で、どういう風の吹き回し！？

絶対帰宅部って言ってたくせに、

もう集団の中に入らないって言ってたくせに！！」



今泉は、怒っているのか楽しんでいるのかよくわからない表情で、私の前に立つ。



「…なに、男でもできた？」



「…は？」



「違うのか」



「んー、じゃあ…好きな人でもできた？」



「…は？」



「お、当たり！？」



今泉には脱帽する。



全く同じセリフで、表情も変えていないはずなのに、声色だけで判断しやがった。



「…わかんない」



「んー、そっかそっかぁ〜

ま、進展あったら言ってよ、いじるから！」



「…さっすが」



「…あっ、やっべ、宿題やんなきゃ」



「はーいあと15分でーす」



「やばいやばい」



私の数学のノートをぶん取り、自分の席に戻っていく今泉。



静かになった窓際に、小さく息を吐いて頬杖をつく。



”好きな人でもできた？“



いや、できてない。



断じて、できてない。



ただ、ちょっとときめいただけ。



ちらりとプリンを眺めてから、また窓の外に目を戻す。



もう一度、息を吐いた。

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