#24 ページ24
．
翌日＿＿＿＿
初めてきたときは思わず泣いてしまった場所。
他のYouTuberさんと仲良くなれた場所。
何度も何度もきた、思い出のある場所。
……まさか、
YouTuberじゃなくなった私がまたくることになるとは。
脱退したときは考えもしなかった。
いや、そもそも今後のことなんて頭になかった。
「…っあー緊張する…」
家から事務所に近づくほど動きが早くなっていた心臓は、事務所を目の前にしてピークに達した。
手足も微かに震えている。
このままでは駄目だと思い、私は両手をギュッと握り、深呼吸をしてから入り口へ向かった。
ここにはアンチや私を悪く言う人はいない。
大丈夫。
怖くない。
そう、自分に言い聞かせながら私は歩いた。
社員の人たちの視線が気になる。
その視線は歩くたびに増えた。
なんでここに、そう思っているのだろう。
ああ、嫌だ。
あまり沢山の人に見られるのは慣れていない。
さっさと約束の場所へ行こう。
その考えが浮かぶと同時に歩くスピードが上がる。
流石に走れないから小走りぐらいだけど。
そんな小走りでも３分ぐらい経てば
約束の場所はすぐ目の前にあって。
『こちらです。』
と言う社員の人の声と共にまた微かに震え出す手足。
そこは至って普通の会議室。
でも今の私にはそこが社長室のようにも思えた。
それほど、私は緊張しているんだ。
目の前にある扉の取手を私は掴まない。
否、掴めない。
まだここにいたい。
もう少しだけ、整理する時間が欲しい。
ほんとに大丈夫かな、とか。何から話そう、とか。
『……どうぞ』
社員の人はいつまで経っても扉を開けない私に痺れを切らしたのか、扉を開けてくれた。
いや、有難いですよ。私の為に開けてくれて。
……でももうちょい心の準備させてよ。
仕方ない、開けられたから入るしかない。
若干の不安と大量の緊張を抱えつつ、
私は会議室に入った。
目の前なんて向けない。
まだ誰とも目を合わせたくない。
目があったら気まずくて死にそうだし。
そう思い私は下を向きながら会議室に入った。
「………え？」
周囲の様子を確認する為に少し目線を上げた程度。
少し目線を上げた私はその光景に目を疑った。
てつやたちがいるはずの会議室には、
．
．
朱「……こんにちは。」
．
朱里ちゃんしかいなかった。
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作者名：メロンパンケーキ | 作成日時：2020年3月27日 19時
