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ポケットの中でずっと震えている携帯。
一度震えるのをやめ、また震え出す。
さっきからその繰り返し。
メンバーや仲の良いYouTuberさんからの電話は全て無視している。
なんならLINEやTwitterのアカウントは消した。
辞めてまでアンチ見たくないし、
メンバーや他のYouTuberさん達が私のことについてツイートしてるのも見たくない。
「……これで良かったんだよ」
一体誰に言ってるのか、分からないまま私の言葉は冷たい風にのせられ悲しく消えていった。
誰かに見つかる前に岡崎から出てしまう。
変に目撃情報出ても面倒くさいし。
「え!A脱退だって!」
「え!?やばくね?」
「うそ、それどこ情報?」
「今日の動画!見てみ!」
携帯を触りながら私の横を通り過ぎていく女子3人組。
1人は慌てて今日の動画を再生し、1人はTwitterか何かを開き、1人は「え?え?」と連呼している。
……それは悲しい反応なの?それとも嬉しいの?
「は、まじやん…」
「10分前のやつなのに再生回数もう100万いっとる」
「やば、Twitterのトレンド東海オンエア関連しかないよ」
聞きたくない。
聞きたくない情報から逃げるように私は駅にいく足を早めた。
だから前の3人を追い越す形になる。
追い越されたり追い越したりリレーかよってね。
3人を追い越す瞬間に聞こえた「えっ…」という声は聞かなかったことにしよう。
[ブーブーブー]
うるさい。うるさい。うるさい。
心配しないでよ。また戻りたくなっちゃう。
迷惑かけない為に辞めたのに、また迷惑かけちゃう。
……やだ。
通知を耳に入れない為に私は走った。
なんで走ったのかは分からない。
気付いたら勝手に走ってた。
走って、走って、走って。
端とは言え商店街みたいなところで走ってるから時々迷惑そうな顔で見られるけど。
でも、
どんなに走ったって通知が鳴り止む訳ない。
ただ疲れただけ。
駅に着いた私は膝に手をついて息を整える。
私が着いた時間は新幹線が出発するギリギリだった。
買っていた新幹線の切符を鞄からだして改札を通る。
私が乗ってすぐ東京行きの新幹線は出発した。
窓から見える岡崎市が懐かしい。
…あそこでたくさん遊んだなぁ。
確かてつやたちとはあそこで出会ったっけ。
どこを見ても思い出しかない。
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「さようなら。岡崎市」
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作者名:メロンパンケーキ | 作成日時:2020年3月27日 19時