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｢え、、、紫耀、、、？｣
突然の出来事に体が固まってしまう。
｢どうした？家帰らないの？｣
｢あー、帰ろうと思ったんだけど寝過ごした上にお金なくて、、、、｣
さっきまで帰れるか心配だったのに、そんなことよりも髪の毛が乱れてないか気になり、前髪を整える。
｢え？大丈夫？｣
｢うん。多分だい、、、、｣
大丈夫、と無意識に言いかけて私はハッとした。
地元じゃないところまで来ちゃったのに、たまたま紫耀に会うとか、
これ逃したらほんとに歩いて帰ることになるのでは、、、？
え、でもそしたらお金借りることになるよね？
でも紫耀に悪いしな。
いやでも！！
と、頭の中で考えていると
｢ちょっと来て｣
そう言って紫耀は駅の出入り口の方向へと歩いていく。
｢え、、、？ちょ、どこに行くの？｣
私は後ろから紫耀を追いかけた。
紫耀が向かったのは電車のチケット売り場。
｢Aの家、昔と場所変わらないっけ？｣
｢え？あ、うん。そうだけど。
え、待って買うの？私の？｣
｢だって金ないんだろ？｣
そう言いながら鞄から財布を出す紫耀。
｢で、でも｣
｢気にすんなって｣
そう言いながら画面を操作している紫耀の横顔をこっそり見る。
話すの久しぶりだな。
心臓が飛び出しそうなほど大きく鳴っていて、
手足の感覚さえないように感じる。
｢はい。ここ家から一番近い駅だよね？｣
｢あ、うん。ありがとう｣
紫耀からチケットを受け取る。
指が当たりそうで当たらなくて、手が微かに震えている。
｢明日お金返すね｣
ありがとう、ともう一度言うけど、久しぶりに話すからか、目すら合わせられない。
｢じゃあ、帰ろうか｣
と言って改札口に向かって歩き出す紫耀。
｢え、、、？ま、待って！一緒に？｣
｢あれ？一緒に帰らないの？｣
紫耀が振り返って立ち止まる。
｢え、あ、いや、紫耀用事でここ来てるのかなって思って｣
｢あー、俺友達と遊んだ帰りだから｣
ほら、帰るよ。
そう言って紫耀また歩き出す。
嬉しくてニヤけそうなのを必死に抑えて、私は少し駆け足で紫耀を追いかけた。
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作者名：琥珀 | 作成日時：2019年10月17日 23時
