1話【出会いと始まり】 ページ2
*戸田 昌俊視点*
窓をちらり、と眺める。
雲ひとつない快晴に優しく地を照らす太陽。
静けさを増していく外とは違い、ここは人の声に溢れていた。
耳をつんざくような声は、逃げ出してしまいたいほど騒々しかった。
「バスケ部入らなーい?」
「ソフトテニスもよろしくねー!」
午後、放課後の時間。
狸ヶ丘高校一階廊下は部活動の勧誘で賑わっている。
運動部、文化部関係なく声を張って呼びかける先輩方。
俺もたまに声をかけられるけど、目当ての部活ではなかった。
人混みに酔いながらも、目当ての部活動を探す。
部活目当てでこの高校に来たぐらいだ、絶対に見つけなければ。
「あっ……あった。」
弱い声が口から漏れる。
よかった……。本当、見つかってよかった。
嬉しさに、今までの疲れが全て吹き飛んだ気さえした。
俺の視線の先には、狸ヶ丘高校バレーボール部という文字。
文字を囲むように立つ幾人かの先輩方は、きっとバレーボール部の部員だ。
「すいません、バレーボール部ですよね?」
「うん。そうだよ。」
にっこりと笑って答えた人は、五十嵐さんというらしい。制服を見たらそうあった。
安堵しつつも、もう一度問う。
「俺、1年の戸田 昌俊です。入部希望したいのですが……。」
と言うと、周りの方もぱっと明るくなった。
でも、まだ一部俺を睨むように見る人がいる。
「本当!?じゃあこの入部届け、宜しくね。」
一枚の紙が手渡される。
筆記用具は持っているので、すぐに書き終わった。
紙を五十嵐さんに渡すと、部活時間まで待っててねと言われた。
「そういえば、マネージャーっていないんですか?」
確かにマネージャーがいると聞いたことがある。
他の部活では、二、三人のマネージャーが見られた。
「二年生の子が1人いるわよ。今はいないけどね。」
苦笑しながら答えたのは、雫芽さん。女性的な優しい口調だ。
「他の人たちと別の場所で勧誘してるはずっすね。」
先輩方の間からにょきっと顔を出したのは、奴村さん。
人懐っこい笑顔でどこか人に好かれる印象を持った。
「奴村清春君と、一宮ちゃん、それに渡辺君よね。」
「だ、大丈夫っすかね。」
奴村性がもう1人、ってことは兄弟なのかな?
あと、マネージャーの苗字は一宮さんらしい。
その後は特にすることもなかったので、そのまま時間を待つことにした。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ