幼なじみは鈍感な向井くん。【橙】

躊躇い ページ19

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Aが連休を利用して東京へ出てくるって言いよった。

それはええのよ。

観光するとこいっぱいあるしな、案内だってしたるわ。

せやけど問題は、



「でなー、昔馴染みが大阪から出てくるんやけど。俺の家に泊めろ言うねん」

「泊めてあげたらいいじゃん。なんの問題があんの？ ねえ、阿部くん」

「ああ、だね。お互いに相手も居ないなら遠慮することもないし」

「ちゃうやん！ 結婚前の男女が密室に二人きりなんて、なんか間違いあったらどないしよ！ってなるやん！え、ならんの？」

「なったらなったで」

「めめ、お前さてはプレイボーイやな？」



なったらなったでって、なんやそれ。

店の取材を受けてから仲良くなった編集者の阿部ちゃんとめめ。

何かと縁があって、ふっかさんともめめも知り合いらしいねんけどな。


こっちに来てホームシックなんか、人恋しい俺はとりあえずなんでも出会いを大切にしよるわけよ。

そんで今日はこの二人に相談しよんやけど、ちょっと相手間違えたわ。


一人はなんや俺以上になんか思い悩んでるんか溜息よおさんつきよるし、一人はリア充かなんかで腹立つしな。




「幼なじみなんだろ？ 別によくね？」

「よかないやろ！ 幼なじみ言うても同じ部屋で寝たことなんかないわ」



俺の部屋ワンルームやし。

客用の布団なんかないし、わざわざ買うのもってなるし。



「なんでホテルとらんのやろ」



ホテルの方がよくないか？

東京観光して疲れた体を手足伸ばしてゆっくり休めるやんか。

そう提案してみたけど「節約やん！」で通しよったからな。


ただのケチかって。




「で、その子可愛いの？」

「目黒、先輩に言うぞ」

「え、いややめてよ！ ただ可愛いか聞いただけじゃん阿部くん！！」


色男をじーっと見つめる阿部ちゃん。


慌てるめめがおもろいけど、俺も笑ってるわけにはいかん。


結構真面目なんよ、俺は。





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