幼なじみは鈍感な向井くん。【橙】

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「俺な、Aの事が好きやねん」

「…………」




ふわっと、優しい笑み。

いつか見た、夕日に染る教室で泣く私に『どないしたん？ 』と、優しく笑いかけてくれた時のような。


あの全て受け入れてくれそうな笑顔に、私はまだ頑張れると勇気をもらったから『 なんでもないよ 』て言うたんや。




「……っ…」

「泣くなや〜」

「っ、せやかてっ」



溢れてくる涙を身を乗り出して指で掬うなんて、康ちゃんってそんな漫画の中のイケメンキャラがするような事をする人やったん？





「まどろっこしいことしたぁないからハッキリ言うわな。俺、多分ずっと前からAの事好きやったんやと思う。これまで付き合ってた彼女の事、好きやと思って付き合ってたけど、ちゃうかってんなー」

「こぉ、ちゃん…」

「Aの事好きやて自覚したら、すっごい胸が苦しいねん。Aの事考えたら会いたくなるし、泣かせた奴の事どつきまわしたろか思ったし」



いやいやいきなり治安悪っ！



ゴツン！！


「えっ！？ なにしとん！？」



いきなり目の前のテーブルに額を打ち付ける康ちゃん。

頭イカれたんか！？





「俺、泣かせたやろ。Aのこと」


「あ、やから？」


「うん、ごめん」


「ふはっ、アホやな〜」




私を泣かせた奴をどつきまわしたろかって、まさか自分もかい！って突っ込んだ私に、康ちゃんは苦笑いしつつ赤くなった額をさわさわしとる。


嬉しくて、溢れてた涙がピタリと止まった。





「なあA」





今度はすごく真面目な顔をしてくるから、自然と背中もピンと張る。









「俺はもう二度と絶対に泣かせへんから、俺の事選ばん？」

「それは、」

「俺の彼女になってほしい。あかん？」





最後「あかん？」て聞きながら、ちょっと唇を尖らせるとこが可愛い。


そんなふうに思ったことは言わへん。





「……ええよ。康ちゃんの彼女になったる」




長年の片想いが実った瞬間、止まっていた涙がまた溢れてポロポロと頬を伝って落ちた。



それを「泣くなや〜」と、とんでもなく優しい声色で言うて、くしゃくしゃと髪を撫で回されて、さらに涙が溢れた。





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