幼なじみは鈍感な向井くん。【橙】

幼なじみと、失恋 ページ1

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「なんでなんっ！ ほんまにっ、もういややっ」



ガン！と、テーブルに缶ビールをぶつけた私。

ダラダラと涙と鼻水を垂れ流して、わーわーとご近所迷惑もいいとこな午前０時。



「ほれ鼻水くらい拭きぃや。はい、ちーん」

「ん"ーっ！」



ベット横に置いてあるテッシュ箱からティッシュを数枚取って私の鼻に押し当てたのは幼なじみの向井康二こと康ちゃん。

くしゃくしゃとティッシュを丸めてゴミ箱にナイスイン。



「つうかな、毎回毎回ほんま飽きへんな？ なんでAは別れる度に度に俺ん家来んねん」


世話焼きのオバチャンがおるスナックちゃうねんで。て、そりゃそうやろ。


わかっとるわ！



「やって…康ちゃんくらいしか、ヤケ酒に付き合ってくれる奴おらんもんっ」

「せやからヤケ酒すなって！」

「むりっ！」



そんなん言うたかて、振られる理由がいつもあっち側からで「ごめん飽きたわ」とか「なんかちゃうねんなー」とか「好きな女できたからほな！」とか、



「わけわからーんっ！！」

「………はあ。ほれもうティッシュ箱持っときぃや」



何度鼻をかんでも止まることない鼻水。

見兼ねた康ちゃんはティッシュを箱事渡してくるけど、今の私はすっかり甘えたモードなわけやから、ブンブンと顔を左右に振ってから鼻を突き出した。



「んっ！！」

「はあ、もうほんま世話やけるわー」



溜息つきながらもまたティッシュを鼻に押し当ててくれる康ちゃん好き。








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康ちゃんとは幼稚園からの付き合いで小学校、中学校、高校とずっとクラスまで同じやった。


ひょうきん者の康ちゃんは誰からも好かれて人気者で、そんな康ちゃんに憧れて引っ込み思案やった自分を変える努力をした。


康ちゃんみたいになりたいって、頑張って頑張って人前に立つことに慣れようとした。


その結果、中学高校と生徒会長を勤めあげたし、男女共に友人に恵まれて楽しい学生時代を送ったんよ。

けど楽しかったと同時に切ないもんもあった。



康ちゃんに憧れて、康ちゃんのようになろうとしたのに、近付けば近付くほど康ちゃん自身は遠ざかった。



幼なじみと言えど男女やし、漫画でよくある家が隣同士とか親が友人とかそんなんがあるわけでもないから、意図的に会おうとせな会えんわけ。



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