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彼女と鏡の話−14 ページ41

初めて聞く彼女の声は耳障りなノイズのようで心が聞くのを拒む
なのに、声は心が作った壁の隙間をすり抜けて、心の奥に響く

____そして。
声をきっかけに空気が一変した

私と優希を『彼女』がいるこの空間に満ちる"日常"の空気が
"狂気"で塗り潰されてゆく

「っ」

突如、鏡から尋常じゃないくらい長い腕がいくつも飛び出した
それはマネキンのように無機質な白だが、
その印象に反して生物的な動きで優希の足や腕などにからみついた

そのままじりじりと優希の体は無数の腕に引きずられ、鏡の方へ後退していく

「結、衣ぃ…」

優希が掴まれた手を私の方へ必死に伸ばしてくる

だけど、私は動けない

周りの狂気に押しつぶされそうで、立っているのがやっとだった

―――違う
ただ私の中に渦巻く恐怖に対する勇気が足りなくて、立っていることしか出来ないだけ

そんな私を嘲笑うように、するりと彼女の声は耳に入ってきた

『貴方に邪魔はさせない…
 やっと独りから2人になれるところなんだから』
「助けて!」

ノイズに叫びが重なる

…私は動けない

『貴方は私とこの子との接触を邪魔してきた
 その時、私は貴方が私を追い払う方法を見つけてしまうと思った
 だから今度は失敗しないように
 この子をこっちの世界に連れ込むのを早めたんだよ?』
「助けて…!」

彼女は不気味に嗤い、
優希がすがるような目をこちらに向ける

私は…

彼女の言葉に愕然とした

私が、私がそばにいたからこんな目に…?

もっと違う選択をしていればこんな結果にはならなかった?

彼女の声はそんな私の思考に割り込む

『これでもう独りぼっちじゃない
 これでもう寂しくない』


優希が鏡に接しようとしていた
鏡の中のあの子が優希に触れるように手を伸ばしていて…

最後の最後で私の口から言葉が漏れた

「優希…」

優希は鏡に体を沈み込ませながら、無表情ともとれる顔で私を見て、
そして_____













「ねぇ」














「なんで助けてくれなかったの?」



優希の体は、完全に鏡の中に吸い込まれた

と同時にあの子も消え去った


私は全身から力が抜けて床に座り込んだ



「…優希」

と、親友の名をもう一度呟いた

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設定タグ:黒猫 , オリジナル , ホラー   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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寒極氷化(プロフ) - とらさん» いやぁ、CMみたいな猫だったら私は嬉しいですけどねww それに、ガン付けている黒猫も可愛い!!!! (2014年6月10日 17時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
とら - それでも黒猫のよく顔を見た人によれば「ガン付けてる」とのこと、確かにシャムとかよりもきつく見える、CMみたいな「鯛食べたい」との要求はないが(笑) (2014年6月9日 20時) (携帯から) (レス) id: 76e6498593 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - とらさん» それはすごく羨ましいしですね! 私なんか、何回逃げられたことか…(T_T) (2014年6月9日 18時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
とら - 確かに黒猫の不吉な噂は聞きますが自分にしてはその辺にいるただの猫ですね、黒猫に何回絡まれてきたのやら (2014年6月7日 20時) (携帯から) (レス) id: 76e6498593 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - アリスさん» ホントですかっ 自分ではどうもそう思えないので、そう言ってもらえるのは嬉しいです (2014年6月2日 17時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極 氷化 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kangoku/  
作成日時:2013年11月10日 0時

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