少年と桜の話−9 ページ26
「――ぃっ!」
崩れていくサクラの肩を見て、僕は思わず声を上げた
彼女が初めて顔をしかめた
「醜いでしょう?
毎年、シロザクラと契約をしたこの日に体が腐敗していくのよ
だから、早くあなたの体をちょうだい?」
サクラは僕に向けて手を伸ばす
しかしその手すらも腐っていく
ボロボロと皮膚が剥がれて、赤黒い肉が見え始める
それも、ぐしゅぐしゅと溶けてただれる
「ソレ」が近づいてくる
「ぁ、く、来るな...」
必死に口を動かして力無く言う
そのとき、嫌悪感を覚える臭いが漂ってきた
"死臭"と気づくのに時間はかからなかった
息をする度にその臭いが体内に入ってくるようで、吐き気がした
サクラが口を開けた
「.ぁ..ぅ」
ただ、口と喉にも腐敗が進んでいて、言葉になることはなかったが
ついに、手だったモノが腕に触れた
「がぁっぁぁ!!」
瞬間、ねっとりとまとわりつく感触と尋常じゃない熱さが襲った
せめて、目を逸らしたいのに、逆に彼女と目が合った
それを「目」と呼べるのならば、だが
「ひっ…」
腐敗が目のとことまで及び、眼球が奥の方へと落ち窪んでいこうとしていた
そもそも、眼球自体が歪み球体の形をしていない
____もう、僕には彼女を人と認識できなかった
段々と「ソレ」が僕に覆いかぶさってくる
視界が赤黒く染まっていく
そんな中、視界の端にあるシロザクラが血に濡れたように赤く見えた
・・・
「―――終わったわ」
そう言って息を吐く少女
眉目秀麗と言ってもいい容姿した少女は、薄紅色の服を着ていた
なぜかサクラの足元には男物の服が落ちていた
横には超然と佇むシロザクラと呼ばれる薄紅の木がある
彼女は自分の右手の親指を見た
「どっかの小さい骨を毎回取りこぼすっていうのはどうなのかしら?
今回は親指の骨を取りそこなったわ」
そう、彼女の親指には骨が無かったのだ
それを証明すかのように、足元には小さな骨が落ちていた
彼女の不満に答えるようにシロザクラが揺れる
「はいはい、私の力不足、ね」
まるで、木の言葉がわかるかのように彼女は言った
「もう帰るわ…っと、そこに落ちてるゴミも処分しなきゃね」
彼女は落ちていた男物の服を黒い袋に乱雑に入れ、
それを持つとシロザクラのもとを去った
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寒極氷化(プロフ) - とらさん» いやぁ、CMみたいな猫だったら私は嬉しいですけどねww それに、ガン付けている黒猫も可愛い!!!! (2014年6月10日 17時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
とら - それでも黒猫のよく顔を見た人によれば「ガン付けてる」とのこと、確かにシャムとかよりもきつく見える、CMみたいな「鯛食べたい」との要求はないが(笑) (2014年6月9日 20時) (携帯から) (レス) id: 76e6498593 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - とらさん» それはすごく羨ましいしですね! 私なんか、何回逃げられたことか…(T_T) (2014年6月9日 18時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
とら - 確かに黒猫の不吉な噂は聞きますが自分にしてはその辺にいるただの猫ですね、黒猫に何回絡まれてきたのやら (2014年6月7日 20時) (携帯から) (レス) id: 76e6498593 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - アリスさん» ホントですかっ 自分ではどうもそう思えないので、そう言ってもらえるのは嬉しいです (2014年6月2日 17時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寒極 氷化 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kangoku/
作成日時:2013年11月10日 0時