53話 ページ10
「少し遅かったか」
私が着いた時、広場はなかなかの惨状だった。脳味噌むき出しのヴィランに、腕をへし折られ顔面を地面に叩き付けられていた。
ひと目で分かるほどに状況は芳しくない。
恐らくあれが……
「脳無……か」
鬼ではない。
だがアレが纏う禍々しい気配は鬼のそれに近い。
もちろんベースが人間だから、アレは鬼ではなく鬼擬きというのが正しいのかもしれないが、それでも予想以上に厄介かもしれない。
「とりあえず、緑谷達と合流するか」
私は、絶句した様子で広場の惨状を凝視している緑谷と蛙水さんと峰田のいる方向に視線を向けた。
緑谷side
少しでも相澤先生の助けになればと思い広場に向かった僕らが目にしたのは、気味の悪いヴィランに押さえつけられ大怪我を負った相澤先生の姿だった。
ヴィラン。プロの世界。
僕らはまだ、何も見えちゃいなかったんだ。
「対平和の象徴。改人 "脳無"」
身体中に手を付けた不気味な風貌の男の嗤いを含んだような声が、やけにその場に響いた気がした。
「緑谷ダメだ…さすがに考え改めただろ…？」
「ケロ…」
震えている峰田くんと、顔には出さずとも動揺しているであろう蛙水さんの横で、僕は言葉もなく呆然とその光景を見ていた。
「あの場に飛び出さなかったことは褒めてあげるわ」
「………へ？」
唐突に僕たちのすぐ後ろから聞き覚えのある声がした。驚いて振り返ると、口元に指を立てて笑っている沖田さんがいた。
「沖田？」
「さっちゃん、何でここに？」
峰田くんも蛙水さんも、突然現れた沖田さんに驚き目を見開いている。沖田さんは笑みを消して、前方に鋭い視線を向けながら答えた。
「さっきぶちのめしたヴィランから聞いたのよ。広場にいる手だらけ男の死柄木と、私たちを散らした黒霧って奴がオールマイト殺しを実行する役だとね」
『オールマイト殺し』
その言葉を聞いた瞬間、僕達の顔に緊張が走る。
「だから相澤先生に加勢しつつ撤退しようと思ってここに来たんだけど、どうやら少し遅かったようね」
沖田さんはそう言って悔しそうに舌を打つ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナツピー(プロフ) - ダイヤさん» ありがとうございます(*^^*) (2021年10月8日 7時) (
レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤ - 更新頑張ってください (2021年10月7日 16時) (レス) @page42 id: 1ad51ff6bc (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - セツさん» コメントありがとうございます。いろいろ拙いですけど楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。 (2021年1月12日 23時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 面白いです！これからも更新頑張ってください、応援しています！ (2021年1月12日 22時) (レス) id: b28a5b6b48 (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 吉吉さん» コメントありがとうございます(^^)そう言っていただけて嬉しいです！ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツピー | 作成日時：2020年6月2日 22時
