82話 ページ39
「彼女は先に帰宅した。色々とすることが多いのだろう」
淡々とした口調でそう説明する塚内に、生徒たちは困惑した表情を浮かべる。
重苦しい沈黙が数秒続き、やがてその空気に耐えられなくなったのか、幸千の戦いを少し離れたところから目撃していた生徒の一人──峰田が口を開いた。
「なんで······捕まえないんだよ」
「おい峰田！」
峰田の発言を即座に咎めたのは切島だった。
だが峰田は止まることなく、自分を咎めた切島や、切島と一緒に幸千の戦いを間近で見ていた轟や爆豪のことを涙目になりながらキッと睨みつけた。
「お前らすぐ近くで見てただろ！沖田が人の首斬るとこ!!」
峰田の発言に、その現場を直接見ていなかった生徒たちは息を飲む。
「あいつ人殺したんだぞ!?人殺しが捕まらないなんておかしいだろ!!」
「やめろよ峰田!!」
切島はさっきより大きな声で峰田の発言を止めた。
「お前見てたなら分かんだろ！沖田がいなかった俺ら確実に死んでたんだぞ!?俺らだけじゃなくて周辺にいた奴らも全員最悪無事じゃすまなかったところなんだぞ!?
なのに『人殺し』は無ェだろ『人殺し』は!!」
そう言い募る切島に、ゲート近くで事の一部始終を見ていた瀬呂がおずおずと口を開いた。
「け、けどよ····いくらなんでも殺すのはやりすぎだろう····。取り押さえるとか、捕まえるとかさ·····いくらでもできただろう？」
峰田や瀬呂の意見は大なり小なりこの場にいる生徒たち共通のものだろう。例外があるとすれば·····
「いや」
これまで特に何も発言してこなかった轟の緊張を孕んだ声音がその場に響いた。
「間近で見た側から言わせてもらうが、『アレ』は捕まえるとか、そういう範疇を超えている」
それは正に認識の差だと塚内は感じた。
遠目で見るだけでも鬼は恐ろしい。だが轟たち4人は鬼に喰われるという恐怖を間近で感じただけでなく、鬼との戦いの空気に触れ、その異様さも身をもって体感した。
そんな彼らと、少し離れた場所から見ていただけの生徒たちとでは鬼に対する認識に明確な差が出るのはある意味当然だった。
プライドが高い爆豪でさえ轟の発言に対して一切口出ししようとしなかった。
その感覚には塚内も覚えがあった。
塚内自身、元々は反鬼殺隊派だった。だがそれは実際に鬼と遭遇するまでのこと。初めて鬼と対峙した瞬間、塚内はっきりと認識した。いや、認識されられた。
『アレは人間ではない』と。
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ナツピー(プロフ) - ダイヤさん» ありがとうございます(*^^*) (2021年10月8日 7時) (
レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤ - 更新頑張ってください (2021年10月7日 16時) (レス) @page42 id: 1ad51ff6bc (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - セツさん» コメントありがとうございます。いろいろ拙いですけど楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。 (2021年1月12日 23時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 面白いです！これからも更新頑張ってください、応援しています！ (2021年1月12日 22時) (レス) id: b28a5b6b48 (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 吉吉さん» コメントありがとうございます(^^)そう言っていただけて嬉しいです！ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツピー | 作成日時：2020年6月2日 22時
