35話 ページ41
私は歩く足を少し早めて義勇さんの隣に並んだ。
私の手を引く義勇さんの右手──
前世のあの戦いで失った右腕──
「どうかしたか？」
私の様子がおかしいと思ったのか、義勇さんは歩く足を止めて私の顔を覗き込む。
「大丈夫ですよ」
私が笑ってそう答えると、義勇さんは少し不満そうな顔になる。
「大丈夫か大丈夫じゃないかぐらい分からないとでも思ったか？」
ああ本当に、この人は変なところで鋭いから困ってしまう。
本当はずっと不安だ。前世のように、若くしてこの人を亡くしてしまうのではないかと思うと不安で仕方ない。前世では母や娘の陽毬、それに陽毬が産んだ孫もいたから、義勇さんがいなくなっても孤独になることはなかった。
でも愛した人の最期を看取ったあの日の痛みは、今でも私の中にあり続けている。きっとこの不安は、私の心の奥底にずっとあり続けるのだろう。
少し伏し目がちになった私の頬を、義勇さんはそっと撫でた。
「ここにいるぞ」
それでもこの人は私のそばにいてくれた。前世の残り少ない時間を全て私にくれた。そして、今世でも私と生きることを選んでくれた。
「また……俺と生きてくれるか？」
私が12歳で最終選別を突破した日、再会して以来なんとなく友人のような関係になっていた義勇さんは唐突にそう言ってきた。
この頃の私は、どこかぬるま湯に浸かっていたような感覚だった。今世でも義勇さんと一緒に生きたいと思いつつも、前世と今世は別だからと義勇さんに言われるのが怖かった。もしそうなったら、私は自分だけ前世に取り残されたような気持ちになっていただろう。だから私は、ずっと自分の気持ちに蓋をしていた。
でもそんな不安を抱く私を他所に、義勇さんは選別を終えたばかりの私に求婚のような告白をしてきた。いや、今思い出すとあれは求婚のようなというより、もしかしたら求婚のつもりだったのではないかと思う。
突然の告白に私はかなり驚いた。
でもこれをきっかけに私は、自分の中にある不安も、前世から受け継いできた想いも、全て抱えて生きていく覚悟を決めた。
今でも度々不安に駆られるけど、この人が──義勇さんがいてくれるから、私は自分の中の恐怖や不安にも向き合えた。
私は、私の頬を撫でる義勇さんの手に自分の手を重ねた。
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ナツピー(プロフ) - むいみおさん» その予定はありません。すみません。 (2020年6月12日 7時) (
レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
むいみお(プロフ) - 名前変換できるようにしないんですか？ (2020年6月12日 6時) (レス) id: e4d7652d9a (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 好きと言っていただけるなんて嬉しすぎます！更新気まぐれですけど楽しんで読んでいただけたら幸いです(^^) (2020年5月23日 16時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
からあげ - すぅーー(息を吸ってる)好きィィィ！！です。はい。更新頑張ってください！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 7170e0490e (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 菊理さん» コメントありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります(^^) (2020年5月17日 12時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツピー | 作成日時：2020年3月26日 0時
