31話 ページ37
「足の怪我はもう治ってるんだな？」
轟の視線は、私の傷一つない素足に向いている。
「再生できるとはいえ、随分無茶するな…」
「まぁ、再生できても痛いことに変わりないけどね」
それに私の個性はあくまで負った傷を治癒できるというだけで、例えば切り落とされた四肢がまた生えてくるなんてことはない。再生にも当然ある程度限度がある。
「悪いな…」
轟は少し申し訳なさそうな顔になる。轟は爆豪と違ってそれなりに良識がある方らしい。
「気にしないで。怪我なら慣れてるから」
さて、今度は私から聞かせてもらおう。さっきの勝負の時に感じた違和感について。
「質問に答えたところで、私も聞きたいことがあるんだけど？」
「何だ？」
「あなたの個性は氷と炎の両方を兼ね備えているんでしょう？」
轟の個性は「半冷半燃」。勝負が終わったあと、凍らせたビルを炎で溶かしていたから、氷も炎もそれなりに使えるはず。なのに何故──
「どうしてあなた、炎の『個性』は使わなかったの？」
それを聞いた瞬間、轟の目付きが変わった。どうやら聞かれたくないことのようだ。
少しの間の後、轟は絞り出すように言った。
「俺は、炎は使わねぇ」
轟の言葉に、私は目を細めた。轟の炎の「個性」は、間違いなく父親のエンデヴァーから受け継いだものだ。私は轟の「個性」を知っていたから、当然炎を使うことを想定して警戒もしていた。
だがあの時──私が龍巣閃で轟が出した氷の壁を破り、そこからすぐに轟の首に木刀を振るいかけたあの時、轟が使ったのはつい数秒前に二度も破られた氷の「個性」の方だった。
正直私はあの時、轟は炎の「個性」で反撃してくるものと踏んでいた。接近戦では間違いなく炎の方が使い易いし、火力次第では私が使っている特殊な木で作られた木刀を破壊することだって可能だったからだ。
そしてそれを折り込み済みで私は轟に突っ込んだ。だからこそ、轟が私の足を凍らせた時に一瞬反応が遅れた。
轟がどちらを使っても対処することは当然私なら可能だったが、轟があそこまで氷に固執しなければさっきの勝負の結果も変化したかもしれない。
はっきりと炎を使わないと宣言するのは単なる父親への反抗期か、それとも複雑な事情があるのか……。
まぁ私には関係ないけどね
「単なる興味だから、事情を話したくないなら聞かないわ」
「悪いな。
今回は負けたが、次は勝つぞ」
そう言って轟は私の横を通り過ぎて行った。
「要観察者追加ね」
前を歩く轟の後ろ姿を見すえながら、私は小さく呟いた。つくづくこのクラスには退屈しなさそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナツピー(プロフ) - むいみおさん» その予定はありません。すみません。 (2020年6月12日 7時) (
レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
むいみお(プロフ) - 名前変換できるようにしないんですか？ (2020年6月12日 6時) (レス) id: e4d7652d9a (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 好きと言っていただけるなんて嬉しすぎます！更新気まぐれですけど楽しんで読んでいただけたら幸いです(^^) (2020年5月23日 16時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
からあげ - すぅーー(息を吸ってる)好きィィィ！！です。はい。更新頑張ってください！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 7170e0490e (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 菊理さん» コメントありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります(^^) (2020年5月17日 12時) (レス) id: 41b7b6a015 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツピー | 作成日時：2020年3月26日 0時
