半純血のネメシス (ページ4)

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2話ページ4

あの日、私は全てを見ていた。

今でも目に焼き付いている。

小柄で小太りの男に杖を向ける黒髪の男に、追い詰められて恐怖の表情の小太りの男。小太りの男は一瞬残忍な笑みを浮かべたあと、そこらじゅうに聞こえる声で言った。

「リリーとジェームズが！シリウス！よくもそんなことを！」

その光景に本能的な恐怖を感じた私は、隣を歩いていた父の服を握った。

───その時

凄まじい音とともに、地面が吹き飛んだ。
時間としては数十秒程度だったのだろうが、私は意識を失い、目を覚ました時、血塗れの父が私を庇うように覆いかぶさっていた。

「お父……さん?」

そして私は、前世の記憶を取り戻した。私の前世は日本人で、今いるこの世界は多分前世の親友が好きだった物語の世界だ。
私はこの世界について、親友から聞いた話以外ではそんなに知らないが、それでも確信を持って言えることがある。

私の父を含む10数名の人達を殺したのは、シリウス・ブラックではない

でも、いくらこの事実を叫んでも所詮3歳児の言葉に耳を貸す人間など一人もいなかった。当然の結果ではあったが、当時の私は世の理不尽を心から呪った。

それからいろいろと落ち着いた後、父方の親族に私を引き取れる人間がいなかったため、私は母方の祖父母に引き取られた。

「いいかセシル、お前の父が死んだのは所詮自業自得だ。クレアもあんな男を選ばなければ馬鹿な死に方をしなくて済んだんだ」

祖父母は両親について繰り返しそう言い続けた。
そして、純血がどれほど尊く、それ以外がどれほど劣等種なのかも教えこもうとしてきた。傍から見たら洗脳教育もいいとこだ。
でも引き取り手のいなかった私を引き取ってくれた恩は一応感じていたから、その時が来るまでは祖父母の理想の孫を演じると決めていた。

ホグワーツでも寮の組み分けも、そういう理由で最初からスリザリンに入ると決めていた。