9話 ページ11
そういえばあともう1人、私が2年生の時に仲良くなった人がいたわ。
「セシル、ここにいたのかい？」
ガラッと音を立てて私たちがいるコンパートメントに入ってきたのは、ハッフルパフのローブを着た優しげな少年だ。
「セドリック」
彼──セドリックの顔を見た瞬間、私の眉間に寄ってたしわが一瞬で無くなるのを感じた。
「我らが参謀もハッフルパフの王子様にはイチコロか」
「いや待て相棒よ。表情には出していないだけで内心では未だ眉間にしわがよってるかもしれないぞ」
フレッドとジョージの失礼発言に、私は反射的に2人の向こう脛を蹴っ飛ばした。
「「いてっ！」」
「失礼なことしか言えないなら、さっさとこのコンパートメントから出て行くことをおすすめするわ。次は杖抜くわよ？」
低めの声で笑顔でそう言うと、2人は同時に肩を竦めながら
「「怖い怖い」」
と言った。実際どう思っているかは謎だが、2人ともコンパートメントから出て行く気配はなく、それどころか私の向かいに座った。
これは到着直前まで居座るつもりだなと、私は軽くため息をつきながらさっき入ってきたセドリックに視線を向けた。
「セドリックは一人？他の友達は？」
「同じ寮の友達と一緒だったんだけど、僕がいたコンパートメントの近くにリィザが一人でいてね。『セシルは？』って聞いたら、『後ろの車両でおひとり様やってる』って言ってたんだ。
少し拗ねてたよ？」
「それは悪いことをしたわね。後で行ってみようかしら？
セドリックも座ったら？後でアビーがいるコンパートメントの場所教えてね」
「ああ、いいよ」
アビーは友人と呼べる人間はほぼ私しかいないというほど交友関係が狭いが、それでも人を寮や血筋で区別するような性格ではないから、他寮でも「話のわかるスリザリン生」と認識されている。
今日私が一人でいたのは、これから始まる波乱万丈な事件についていろいろ考え事をしたかったからだ。まぁ私が持つ前世の記憶云々は誰にも話さず墓場まで持って行くつもりだから、それもあってアビーにも話せない事情が多いんだけどね。
アビーは多分、私がいろいろ秘密を抱えていることに薄々気づいている。それでも知らないふりをして放っておいてくれる彼女の気づかいは、こちらとしてはかなりありがたいものだ。
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作者名：ナツピー | 作成日時：2019年9月3日 12時
