54話 ページ7
「この500年の大乱、こんな言葉を口にした王は一人しか知りません。
かつて"戦神"とまで畏れられた…」
「昭王の名は二度と口にするな！
それがお前のためだ」
昭王の名を口にしようとした王騎将軍を大王は遮った。これには、昌文君を始めとする兵たちも冷や汗を流す。
私たちはというと、一切動揺せず静かにお二人の会話に聞き入っていた。
「戦神 昭王──
在位55年間のうち、そのほとんどを戦に投じた我が曾祖父。彼が王と慕っていたのはお前だけじゃなく、秦国中の武人が自ら命をさし出すほどに忠を尽くした。
しかし昭王が死んでもう7年だ！
王騎お前はっ、最愛の主を失い着地する場所を求めてもがき苦しんでいる虚しい鳥だ！」
大王の厳しい言葉に、私の脳裏に生前の両親の姿が過った。いつの日か来るであろう昭王の天下を信じ、命燃え尽きるまで忠義を尽くした人たちのことを。
志半ばで昭王が斃れられた時の父の嘆きは、今でもはっきりと目に焼き付いている。
「昭王の影を追っている限り、お前の降り立つ所などないぞ。無論俺からお前の寄り木になってやる気など毛頭ない。
だがもし俺と共に戦いたいと願うのなら、昭王の死を受け入れ、一度地に足をつけよ。
中華に羽ばたくのはそれからだ。
"秦の怪鳥"よ！」
全て言いきった大王を無言で見つめる王騎将軍の後ろで、私は静かに空を仰いだ。
これまでの長き歴史の中で、これほど重く、これほどまっすぐに"中華への路"をとらえていた者が果たして存在していただろうか？
私はすぐ隣にいる蓮の方に一瞬視線をやった。
蓮、あんたが言った通りよ。この話は確かに直接聞かなければ、私が今こと答えにたどり着いていたかは分からない。
「どうやら、あなたも答えが出たようですね」
こちらに背を向けたままの王騎将軍が笑いながら聞く。その声は、得体の知れない鋭さを持っていた先程までより幾分和らいで聞こえた。
私も面の下で笑みを浮かべながら返す。
「ええ、こちらの用は済みました」
当然口を開いた私に、大王を含めたその場にいるものたちの視線が集まった。大王様や昌文君は間違いなく私の正体にも、私がここにいる目的にも気づいている。おそらく、近いうちに答えを聞かれるだろう。
「そうですか。
ンフフフ、なかなか楽しい問答でしたねェ。今日のところは、これで引き上げるといたしましょう」
王騎将軍の急な切り返しに、派閥関係なくどよめきが走る。
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ナツピー(プロフ) - かやさん» 大変お待たせしました。楽しみにしてくださってありがとうございます (8月9日 17時) (
レス) id: 5d05baf364 (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - りゅーりさん» 楽しみにしてくださってありがとうございます。大変お待たせしました (8月9日 17時) (レス) id: 5d05baf364 (このIDを非表示/違反報告)
ナツピー(プロフ) - 三太さん» 大変お待たせして申し訳ありません (8月9日 17時) (レス) id: 5d05baf364 (このIDを非表示/違反報告)
かや - また更新されるのを楽しみに待っています！次は映画も3作目に入りましたね。 (7月29日 13時) (レス) id: 91595a05fb (このIDを非表示/違反報告)
りゅーり - めっちゃくちゃ楽しみにしてます！ (2022年8月11日 15時) (レス) id: ccd8abd8be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツピー | 作成日時：2019年10月6日 0時
