9 雨 ページ9
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雲から零れ落ちたみたいな雨の音。それで、意識が戻った。
余程集中していたらしく、すぐ側の窓ガラスには水滴が点々と付いている。今日の天気予報は曇りのち雨。一応傘もっておいてよかった。まあ、この位の雨なら自転車で帰れるかもしれないけれど。
机の上に乗るワークとノート、ペン消しゴム筆箱。教室の壁を見ると、時計は六時半にはまだ少し遠かった。しかし、集中力が切れたので、諸々を片付け始める。リュックに詰めて、窓をもう一度。
「自転車で帰るの面倒くさいなあ」
一人の教室で、独り言を落とす。
合羽も面倒臭いから、今日電車で明日また自転車で帰ればいいか。数秒の思考で、結論を出した。思わず溜息。
廊下まで出て、灯りを消した。薄暗い廊下はちょっと気味が悪い。天気が悪いから尚更。リュックを背負い直して、歩き出した。
吹奏楽部と軽音楽部の音を耳に通しながら、足をぶらぶらと大袈裟に動かす。静寂に上履きの独特な音が加わった。たった一人だけ、と錯覚させる廊下は、雨と楽器とがたくさん混じって踊りたくなる。……踊れないけど。
雨の音がよりいっそう身近にいる昇降口に着いた。
上履きとローファーを履き替えて、足を地面につけた。次はローファーの足音と混ざる感覚。
折り畳み傘を広げてから、少しだけ粒を眺めて雨に飛び込む。雨が強くなったようで、傘にあたる水がうるさい。
水溜まりを避けながらゆっくり正門まで歩いていく。
「あ」
声が重なった。
「あれ、日向さん!」という山口くんの声が聞こえるまで私たちは瞳を見つめていた。
奇遇だねぇとのんびり言うと、また委員会?と月島くんは返す。
「違うよ。テスト勉強」
「テスト勉強!?まだ範囲も出てないし、テストまで二週間以上もあるのに!」
偉いねって言ってくれるから少し照れる。山口くんの言葉は素直だ。
「やれるうちにやっておかないとね、なんて」
「確率理解出来たの?」
「出来たよ〜ありがとう。月島くんのお陰だ」
「え……!?ツッキーいつの間に!?」
ていうか女の子に!目をまあるくしている山口くんは月島くんに詰め寄って話す。
雨と、彼らと私の身長のせいか二人の会話は全く聞こえない。横目で見て、がやがやと騒ぐ彼らに意外、と笑った。
「あ、そうだ。途中まで一緒に帰っても平気?」
「大丈夫だよっ……ね?ツッキー!」
「……元からそのつもりだけど」
ツンデレだって顔を合わせてニヤニヤした。
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辛 - 日本語化ちょいちょい変。てにをはもおかしい。無理に難しい言い回しわ使わない方がいいと思う。 (9月11日 12時) (レス) @page26 id: 5015934a65 (このIDを非表示/違反報告)
む - めちゃくちゃ良かったです。他の作者様だと冷たかったり口が悪い月島が多いですが、このお話の月島は冷た過ぎず、他人に干渉し過ぎず距離感がちょうど良かったです。とても上手に表現していると思います。告白も月島からなのが良かったです。 (2021年4月18日 4時) (レス) id: be1d7978bd (このIDを非表示/違反報告)
KOMORE(プロフ) - むさん» 本当に長らくお待たせしました……!皆の感情にどう現実味を出すかたくさん考えていたのでそうやって受け取って貰い感無量です。全文私にとって嬉しく糧になるお言葉です。読んで下さり本当にありがとうございました! (2021年2月10日 10時) (レス) id: d075f9ab0b (このIDを非表示/違反報告)
む - 更新楽しみにしていました! 皆の心の動きがとてもリアルで、ツッキーはこんな子とこういう恋愛をするのだろうな、と胸にストンと落ちました。等身大の高校生なこの作品がとても好きです。 完結おめでとうございます! (2021年2月9日 2時) (レス) id: 727df39cb7 (このIDを非表示/違反報告)
KOMORE(プロフ) - なづなさん» コメントありがとうございます!テーマとしている高校生感を感じ取って下さりとても嬉しいです……!ゆっくりですが完結までついてきて頂けると有難いです。応援ありがとうございます! (2020年5月11日 21時) (レス) id: d075f9ab0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:KOMORE | 作成日時:2020年1月14日 22時