【HQ】月島くんと日向さん

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　まだ元気に見えるように薄目の化粧はしてきたつもり、ではある。
　ぱっと顔を見て、一度席に座った。リュックをかけて、もう一度振り返って蛍の顔を見る。




　あれ、

｢なんか、変わった？｣

思わず口から出た言葉は今日の顔と同じようにマヌケだった。
　回らない頭から落ちたそんな言葉を聞いて、蛍は顰め面になる。



｢は？なにが｣
｢なんて言うんだろう……雰囲気？目付き……？いや、いつも通り冷たいや｣



　自分が何を言い始めたかも分からずに自己完結。でも、何となく表情が違う……？とまだぼーっと蛍の顔をガン見していると、蛍は読んでいた本を閉じて勢いよく頭に乗せた。
　そこそこ良い音がして、叩かれたところがじんじんする。手加減なしで本の背を旋毛に下ろされた。咄嗟に旋毛を押さえてカードをする。
　睨むように彼を見た。



｢いったい｣

　膨れっ面をしてみても、座高的に見下げる目線は変わらず彼は眉を寄せた。
　び、と人差し指で私の目を指すので少しびっくりして蛍の目の方に視線をやる。目というよりも目の下を指しているようだった。
　不思議に思ってじっと目を合わせると、短く息を吐いて蛍は言う。




｢キミこそ隈あるから、目死んでる｣
｢えっ嘘……隠してきたつもりなんだけど、よく見てるね｣




　ぎょっとして蛍を見る。コンシーラーで隠しきれてると思ったし、三人に聞いても全然分かんないって言って貰えていたのに、驚きだ。


　私の言葉に、目から人差し指を戻して頬杖をつく。彼が口を噤むからなんなんだ、と思う。
　目を合わせなくなった蛍を不思議に思っていると｢はやく、前向いたら？先生くるよ｣とぶっきらぼうに言われた。





　蛍って難しい。そんな感想を内心こぼして前を向こうと、身体を動かした時、蛍の耳に目が行く。
　……まっかだ。
　あの時とおんなじ、薄ら赤い耳。あの時は照れてるとか、そういった類いの赤さだったけれど、今は？
　照れる要素が見当たらなくて、先生の長々とした始業式の流れの説明やら、夏休み満喫したか、なんて話が頭からすり抜けてそれだけを悶々と考える。





　好きな人がこのクラスにいるとか確証はないけど、私の後ろに立っていて蛍の目線の先にいた。っていうのでわざわざ照れていたらきっとわかり易すぎて、一学期の時点で私が察していると思う。
　そうやって考えるけど、自惚れていいならもしかして、なあんて…………うーん違うか。

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