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仕事帰りに本屋さんに立ち寄って、小説コーナーへ直行する。
お目当ての本は、「加藤シゲアキ」という名前入のプレートがあってすぐに見つかった。
全部買いたいところだったけど、とりあえず予めネットで調べて決めていたデビュー作、短編集、最新の上下巻をレジへ持って行った。
帰ってすぐにコンビニ弁当を食べてお風呂に入り本を読み始めると、思いの外面白くて惹き込まれてしまう。
休みの前の日とかに読めば良かった。
完全にやめ時を見失ってしまった。
結局、最後まで一気に読んで、しかも読み終えた後の衝撃が中々消えず、眠りについたのは外が明るくなってからだった。
職場から徒歩圏内という理由だけでこのマンションを選んだのは、年に1度あるか無いかの大雪の日と今日みたいな寝不足の日につくづく正解だったと思う。
いつもはだいぶ余裕を持って出勤してるけど、今日はギリギリ5分前に到着するペースで家を出た。
「あ、Aさん。おはようございます」
マンションを出たところで声をかけられ振り返ると、コンビニ袋を持った加藤さんが立っていた。
『おはようございます』
何気に加藤さんと会うのはあの日以来で、しかも数時間前まで夢中で読んでたお話を書いた人だと思うとドキドキしてしまう。
「今から出勤ですか?結構遅めなんですね」
『会社、すぐそこなんで』
「そうなんだ。いいっすね。
まぁ俺は出勤とかないんだけど」
ここで何故か、小説の過激な描写の部分を思い出してしまう私の脳内、どうなってるんだろうか。
「Aさん、今日は平日だから夜ごはん作らない感じですか?
だったら今日は何も買わずに帰ってきてください。今日の夜ごはん俺が作りますから」
え?何故?
こないだはお礼に、ってことだったけど今日はご飯を作ってもらう理由が見当たらない。
「昨日、原稿上がって一区切りついたんで、今日は料理に没頭することにしてたんです。つっても朝メシはコンビニおにぎりですけど。
俺は今日ご飯作る、Aさんは作らないってことで丁度いいじゃないですか」
丁度いい?のだろうか…
『でも残業するかもしれないし。何時に帰るか…』
「大丈夫。何時でもいいですから。帰ったらピンポンしてください。じゃあ、いってらっしゃい」
そう言って、加藤さんはマンションへ入っていった。
その日、私は入社して以来初めての遅刻をした。
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まり(プロフ) - ぽ わ た す 。さん» コメントありがとうございます(*^^*)読者の方には主人公に自分を重ねて読んで頂けたら、と思って書いていたので嬉しいです(*^ω^*)これからも引き続きよろしくお願いします! (2019年3月20日 0時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ わ た す 。(プロフ) - 初めまして!情景が本当に浮かんでウキウキしながら読んでました!主人公の自信の無い感じとか自分に重ねたり、としていましたが、本当にいい作品です!次作も読もうと思うので楽しみにして待ってます(≧∇≦) (2019年3月19日 23時) (レス) id: 1a6840d4ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ゆっちゃんさん» コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいです(>ω<〃)〜引き続きお付き合いよろしくお願いします! (2019年3月19日 23時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん - シゲ担なんでこれ読むたびにキュンキュンしますww 他の3人のも読もうと思ってます!お疲れ様でした!頑張って下さい(о´∀`о) (2019年3月19日 23時) (レス) id: cfad8bd8ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 麗さん» コメントありがとうございます(*^^*)何回も読んで頂けてるということで、とっても嬉しいです(o´艸`)これからも引き続き宜しくお願いします。 (2019年3月2日 14時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2019年2月14日 0時