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『えーっ。ムリだよ…
こんな高級なとこ、家賃の半分も払えないよ』
「別に家賃なんていらないし」
『そんなのダメだよ』
「ダメじゃないよ。
俺がここで一緒に住んでほしいってお願いしてるんだけど、嫌?」
嫌なわけない。
首を横に振ると、シゲくんは満足そうに微笑んで、不動産屋さんに声をかける。
「買います、ここ」
買います?借りますではなくて?
1人首を傾げる私を他所に、「ありがとうございます」と頭を下げる不動産屋さんにシゲくんも「よろしくお願いします」と挨拶していた。
「このままどっかで夕食食べて帰ろっか」
まだマンションの前で不動産屋さんとコンシェルジュが見送っているのに、シゲくんは気にせず手を握る。
「すぐにでも入居できるって言うから、来週にでもあっち引き払ってくるわ。
家具家電は全部買い換えるし、必要な物は宅急便で送ればいいし。
Aはどうする?近いし、小さい荷物は俺の車で運ぶか…」
シゲくんはすでに色々考えているみたいだけど、私がこの街に来て以降の展開があまりにも目まぐるしくて、頭がついて行かない。
「A?大丈夫?
ごめん、ちょっと強引過ぎたかな」
気が付くと心配そうなシゲくんが顔を覗き込んでいる。
『ううん、大丈夫だよ』
確かに色々急だけど、シゲくんとずっと一緒に暮らせることとか、オシャレなマンションに住めることとか、悪いことなんて何も無い。
『私なんかがこんな幸せな思いしていいのかな』
「何それ。めっちゃ可愛いんだけど」
急に抱きしめられて慌てて後ろを確認したけど、すでにマンションの前には誰もいなかった。
「大丈夫、誰も見てないから。…キスする?」
『そんなこと、聞かないでよ』
「照れてんの?ほんとに可愛いな、俺の彼女は。じゃあ、勝手にさせてもらうわ」
肩を掴まれシゲくんと向き合う形になると、唇が重なる。
「ずっと一緒にいような。大好きだよ、A」
こうして、ベストセラー作家の彼と同棲する為に、私はわずか2週間で引っ越してきたばかりのアパートから退去した。
end.
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まり(プロフ) - ぽ わ た す 。さん» コメントありがとうございます(*^^*)読者の方には主人公に自分を重ねて読んで頂けたら、と思って書いていたので嬉しいです(*^ω^*)これからも引き続きよろしくお願いします! (2019年3月20日 0時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ わ た す 。(プロフ) - 初めまして!情景が本当に浮かんでウキウキしながら読んでました!主人公の自信の無い感じとか自分に重ねたり、としていましたが、本当にいい作品です!次作も読もうと思うので楽しみにして待ってます(≧∇≦) (2019年3月19日 23時) (レス) id: 1a6840d4ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ゆっちゃんさん» コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいです(>ω<〃)〜引き続きお付き合いよろしくお願いします! (2019年3月19日 23時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん - シゲ担なんでこれ読むたびにキュンキュンしますww 他の3人のも読もうと思ってます!お疲れ様でした!頑張って下さい(о´∀`о) (2019年3月19日 23時) (レス) id: cfad8bd8ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 麗さん» コメントありがとうございます(*^^*)何回も読んで頂けてるということで、とっても嬉しいです(o´艸`)これからも引き続き宜しくお願いします。 (2019年3月2日 14時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2019年2月14日 0時