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『すごい、ちょうど見頃だね』
この場所をぐるっと囲んで咲いている桜は満開一歩手前という感じで、目の前が一面薄いピンク色に染まる。
「まぁ東京にもこれだけ咲いてるところはあるけど、それなりに人も多いからね」
『そうだね』
さすがに誰もいないということはないけど、犬を連れて歩く中年夫婦と、お互いの写メを撮り合う若い女の子二人組がいるだけだった。
自然と一番奥のベンチへ向かう。
「腹減ったし、食べちゃおうぜ」
座るなり、シゲくんがお弁当の包みを開ける。
「なんか、ど定番な感じのしかないけど。
これはちゃんとラップに包んで握ったから大丈夫だからね」
大きめのランチボックスには唐揚げと卵焼きが詰め込まれていて、シゲくんは遠慮がちにアルミホイルに包まれたおにぎりを差し出してきた。
別にそんなの気にしないのに。
わざわざラップに包んで…とか教えてくれるのがシゲくんぽいな、と可愛く思ってしまう。
『美味しそうだね。
おにぎりの中身はシゲくんの梅干しでしょ』
「正解。よくわかったね」
シゲくんがくしゃっと笑う。
ほんとに。
考えなくても直ぐにわかってしまった。
初めて話したのがついこの間なのに、シゲくんのこと結構わかるようになってる。
この短い間、毎日のように顔を合わせてだいぶ近い距離で過ごすようになってたから。
顔を合わせているトータルの時間だけなら、すでに元カレを抜いてしまっているような気がする。
『ごちそうさま。ほんとに美味しかったー』
「うん。なかなかいい食べっぷりだったから嬉しいわ」
シゲくんのお弁当なんてこれが最初で最後かも、なんて思いながら夢中で食べてしまった。
『ごめん。なんかガツガツしちゃった?恥ずかしいんだけど』
「一口食べてお腹いっぱいとか言われるより、美味しそうにいっぱい食べてくれる方が何十倍もいいし」
お弁当箱をさっと片付けてお茶を一口飲む。
さて、言おうか。
「ねえ、Aちゃん」
あの話を伝えようと大きく息を吸い込んだ瞬間、シゲくんに先に名前を呼ばれた。
「もう分かってると思うけどさ。
俺、Aちゃんのことが好きです。
よかったら付き合ってください」
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まり(プロフ) - ぽ わ た す 。さん» コメントありがとうございます(*^^*)読者の方には主人公に自分を重ねて読んで頂けたら、と思って書いていたので嬉しいです(*^ω^*)これからも引き続きよろしくお願いします! (2019年3月20日 0時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ わ た す 。(プロフ) - 初めまして!情景が本当に浮かんでウキウキしながら読んでました!主人公の自信の無い感じとか自分に重ねたり、としていましたが、本当にいい作品です!次作も読もうと思うので楽しみにして待ってます(≧∇≦) (2019年3月19日 23時) (レス) id: 1a6840d4ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ゆっちゃんさん» コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいです(>ω<〃)〜引き続きお付き合いよろしくお願いします! (2019年3月19日 23時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん - シゲ担なんでこれ読むたびにキュンキュンしますww 他の3人のも読もうと思ってます!お疲れ様でした!頑張って下さい(о´∀`о) (2019年3月19日 23時) (レス) id: cfad8bd8ff (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 麗さん» コメントありがとうございます(*^^*)何回も読んで頂けてるということで、とっても嬉しいです(o´艸`)これからも引き続き宜しくお願いします。 (2019年3月2日 14時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2019年2月14日 0時