天鵞絨の世界 (ページ14)

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Aは一瞬目を見開いて、それから思い切り首を横に振った。

えー、そこまで全力で拒否？

「そんなに嫌？」

『嫌じゃないよ。
でもシゲくんと私じゃ住む世界が違うっていうか、釣り合わな過ぎる。
休みの度にあんなとこまで遊びに来てくれて、しかもシゲくんちにまで連れてきてくれて、それだけでも十分過ぎるのに』

「なんだか、フラれるにしても全然納得いかない理由なんですけど？」

『えー？どうすればいいの？
シゲくんと違って、上手いこと言えないもん』

いや、それ俺に聞く？
一応フラれたのに、Aとのやり取りが面白くなってきて笑ってしまう。

「だから、そうね…
Aが俺のこと嫌い、とか。実は家に来られて迷惑、とか」

『そんな訳ないよ』

「じゃあ、シゲはただの友達としか思えない？」

『…そういう訳でもないんだけどなぁ』

そしたら…

忘れかけてた諸々が頭の中を巡り始めた。

聞く？聞かない？

いや、でも聞かないことには話が進まない。

「他に好きな人がいたりする？」

『いない』

考える様子もなく即答してくれて少し安心する。

「あのさ…こないだ、Aんちの近所のおばあちゃんが話してたのが聞こえて…
俺の他に、誰かAに定期的に会いに行ってる人がいるの？しかも東京から、って」

『あー、それは…
なんだろうね。おばあちゃんの勘違い、かな』

絶対ウソじゃん。

嘘つくの下手くそすぎか。

でも、そこまでして隠すって…

尚更モヤモヤする結果になってしまった。

さすがにずっと口を利かないわけにもいかないからその後はいつもみたいに世間話して、テレビ見て過ごして…

だけど、俺の告白は完全に無かったことになった。

そして、予定通り土曜の最終の新幹線でAは帰って行った。