天鵞絨の世界 (ページ13)

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13. ページ13

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『絵本って、よくよく読むと結構深いんだよ』

キッチンでパスタを茹でている間もAは絵本の話をしてくる。

どんだけ好きだったのよ、絵本。
マジで全然知らなかったから。

『ねえ、何か手伝う？』

「大丈夫だよ、そっちで座ってて」

『邪魔だった？ごめんね』

出た、ネガティブ。

「邪魔ではないよ」

邪魔なわけない。
なんならもっと近くでひっついてくれてたっていい。

「で？Aが1番好きな絵本は何？」

Aが余計なことを考えないように、話を広げてみる。

『1番は…なんだろう。
……ビロードのうさぎ、とか』

タイトルは聞いたことあるけど、内容はさっぱり思い出せないな。

「どんな話だったっけ」

『うーん。
うさぎと自分を重ねちゃうんだよね。
私だけ文明が進んでない感じ？』

……いや、話噛み合ってねーし。

どんな話か聞いたんだけど。

この絵本のどんなとこが好き？って質問じゃなくて。

しかも、文明進んでないって何だよ。
田舎暮らしのこと言ってんの？
いや、普通にスマホ持ってるしライフラインもここと同じように通ってるから。

「へぇ。そっか」

頭の中では色々ツッコんでるけど、面と向かっては言わないでおいた。

ちなみに俺も5歳の時に絵本を作って…

は、やっぱ言わなかった。

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『おいしー』

パスタを一口食べてAが目を輝かせる。

『シゲくん、なんでも出来すぎてこわいんだけど…』

こわいって…

「いや、でもスポーツとかは苦手だし」

『でもダンスは出来るじゃない。
確実に私よりは運動神経いいし…
ダメだ、勝てることが見当たらない』

なに？なんで急にシゲに勝とうとしてんの？

「どうした？急に」

『褒めてるんだよ、シゲくんは完璧だって』

「それはどうも…
じゃあ、シゲの彼女になってみる？」

いきなり褒められてちょっと調子に乗った。

「俺、好きだよ。Aのこと」