天鵞絨の世界 (ページ12)

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ベッドの横に布団を敷くと、Aはベッドではなくそっちを選んだ。

Aは同じ部屋で寝たっていいって言ってただけなのに、俺の想像が飛躍しすぎていたらしい。

同じベッドじゃないし高低差があるし、車の中でもっと接近して寝たけど、手を伸ばせば届く所でAが寝てるのは緊張する。

いつもならとっくに寝てる時間だし長距離移動の疲れもあってか、Aはすぐに静かに寝息を立て始めた。

俺はと言えば、普段わりとどこでもすぐに寝れるのに今日は全く眠れず、外が明るくなってきた頃にようやくウトウトし始めた。

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「3時間くらいで帰ると思うけど、夜ご飯帰ってきてからでいい？」

『うん。全然大丈夫』

「書斎に本とかDVD色々あるから、よかったら見てて」

夕方。
家で待ってるというAを残して、仕事に出かけた。

3日ぶりくらいなのに、何ヶ月も休んでたような気分。

東京と向こうでは時間の流れ方が違うような気がしてくる。
とか、浦島太郎的な事を思ってみたり…

帰りはマンションではなく、近くのスーパーでタクシーを降りた。

手早く作れるやつ…パスタにするか。

もう8時だし。
腹減ってんだろうな、A。

ちゃちゃっと買い物を済ませて帰宅すると、出かける時と同じくソファの真ん中にAの姿があった。

俺が出かけてる間全く動いてないんじゃねーだろうな。なんて思ったけど、そうではなさそう。

「絵本？なんで？」

『これ、好きなんだよね。お話も、絵も』

それは以前対談した作家から貰った絵本だった。

へぇ。
Aが絵本見るとか、こんな感じの絵が好きとか、初耳。

確かに俺がいつも泊まるAの部屋には絵本が並んでるけど、子供の頃のをそのまま置いてんだろうくらいに思ってた。