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あの日、学校の屋上でたまたま出会った絵が上手な女の子。
やがて俺にとってかけがえのない存在になり、永遠を誓い合った。
Aと出会う前の俺には到底考えられない幸せな日々。
自宅のアトリエを改装した絵画教室から、続々と子供たちが出て来る。
以前助手をしていた絵画教室の先生が高齢の為、生徒たちをAが引き継ぐことになったのがきっかけだったけど、有名画家の娘ということやその画家が時々気まぐれでやってくる事が口コミで話題を呼び、今ではキャンセル待ちも発生する程の人気になっていた。
現在週に2回の教室をいずれもっと増やそうか、
と言っているけどそれは当分先になりそう。
Aのお腹の中には2人目の子供がいるから。
「パパ」
生徒たちに続いて、2歳になったばかりの息子がアトリエから出てくる。
「海晴、ただいま。パパとお風呂入ろうか」
ママの横でイタズラでもしてたのか、手と顔に絵の具が付いていた。
『おかえり。ご飯用意しとくね』
Aはいそいそとキッチンへ向かう。
俺はスポーツトレーナーになる為、現場の仕事を辞めて大学に通い始めた。
その傍ら、アルバイトでサッカー教室のコーチをしている。
つまり今は2人揃って子供の習い事の先生をしていた。
『来週あたり咲くかもね』
庭の乙女椿は今年も大きな蕾をたくさん付けている。
海晴の時同様、2人目の性別も生まれてからのお楽しみにしてあるけど、今度は【椿】が付く名前になる予感がしていた。
俺の勘はよく当たるから、きっとそう。
『お母さんがね、来てくれるっていうの。
この子が生まれたら』
Aが大きくなったお腹を摩る。
相変わらず地方の旅館で働くAのお母さんは、海晴が生後3か月の時にサプライズで会いに行ったのをきっかけに時々来てくれるようになった。
『海晴の面倒も見てて貰いたいし、しばらくここにいてもらってもいいかな』
「もちろんもちろん。その方が助かるし」
Aの手に自分の手を重ねると、Aのお腹が大きく波打った。
「おお。今日もいい蹴りしてるなー。
将来はなでしこジャパンだな、これは」
『まだどっちかわかんないのに』
Aが笑う。
どうでもいい俺の言葉をいちいち拾って笑ってくれる優しさも、この笑顔も、相変わらず大好きすぎる。
きっと明日はもっと、明後日はもっともっと大好きで、それが永遠に続いていくと確信していた。
end.
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なのはなさいた(プロフ) - 初めて読ませて頂きました!すごく面白いです!楽しませていただいてありがとうございます!! (2020年6月5日 0時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - 大変失礼致しました。 (2020年5月9日 20時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ラークさん» 申し訳ありませんが、そちらの作品は私の作品ではございません。 (2020年5月9日 18時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - こちらからすみません。Secret Love、シゲアキ先生と恋をします、のパスワードを教えていただけますか?よろしくお願いします。 (2020年5月9日 17時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 彩耶さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!また機会があればよろしくお願いします。 (2020年3月10日 2時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年2月10日 13時