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「A。大丈夫?」
帰宅するとAはベッドで横になっていたけど、俺の夕飯はちゃんと用意されていた。
「無理して作ってくれなくてもいいのに…
でもほんと、いつもありがと。
はい、Aにはこれ」
袋の中からグレープフルーツフルーツゼリーを1つ取り出して見せると、Aは身体を少し起こした。
『なんで?』
「そこで渡された。
Aは具合悪くてもこれなら食べられるから、って」
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──side YOU──
誰から、なんて聞かなくてもわかる。
でも、なんで?
祐也くんと話したの?
「A…
具合悪いとこ申し訳ないけど、話そっか」
祐也くんが何を言いたいのかわかっていた。
そうだよね。
ずっと黙っているわけにはいかない。
──「どんどん大きくなるのよ?あまり迷ってる時間は無いんだからね」
数日前の母親の言葉が脳を掠める。
どうするかなんて、もう決めていた。
「結婚しよう。
Aも子供も、絶対に俺が一生守るから」
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数日後。
少し体調が落ち着いたタイミングで実家に行くと、自宅にも店にも母はいなかった。
店のドアには大きく「貸店舗」と書かれた張り紙が貼られ、自宅のドアは鍵が合わずに開けることが出来なかった。
はっきり言ってずっと嫌いだった。
だけど、たった1人の家族で私の母親であることには違いない。
ねぇ。
勝手に家出ちゃったけど、私まだ未成年だよ?
お母さんがいなきゃ、婚姻届出せないじゃん。
子育ての事聞いてみようか、なんて思ってたのに。
祐也くんを通して渡された封筒には、いつか母が引き出した私のバイト代の2倍程の現金が入っていた。
多少無理して用意したんじゃないだろうか。
なんなら、よく家に連れこんでた男の人が実は凄くお金持ちで、その人と一緒にどっかに移住した、とかであってほしい。
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翌週。
祐也くんの両親が広島からやってきた。
私たちが告げた事に、特に祐也くんのお母さんはショックを受けていた。
しかも当分は籍を入れないし、私に身寄りが無いなんて…
「本当に産むの?」とさえ言われたけど、最終的には納得してもらう事ができた。
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無事に安定期に入ってからしばらく経って、お腹はだいぶ目立つようになった。
もう性別はわかるみたいだったけど、祐也くんの希望で、産まれるまでのお楽しみにすることになっていた。
知らない番号から着信があったのはそんな時。
『はい…』
「Aか?」
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なのはなさいた(プロフ) - 初めて読ませて頂きました!すごく面白いです!楽しませていただいてありがとうございます!! (2020年6月5日 0時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - 大変失礼致しました。 (2020年5月9日 20時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ラークさん» 申し訳ありませんが、そちらの作品は私の作品ではございません。 (2020年5月9日 18時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - こちらからすみません。Secret Love、シゲアキ先生と恋をします、のパスワードを教えていただけますか?よろしくお願いします。 (2020年5月9日 17時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 彩耶さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!また機会があればよろしくお願いします。 (2020年3月10日 2時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年2月10日 13時