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何してんだよこいつ。
俺の顔を見て離れたものの、完全に後ろからAちゃんに抱きつくような体勢を取っていた。
マジで許せねぇ。
『ダメだよ、手越くん…』
突如背中に抱きついてきた柔らかい感触と大好きな声に、振り上げた右手の力が抜けた。
そうだ。
今向き合わなきゃならないのはAちゃんの方なのに。
角田をぶん殴るのなんて、後でもいい。
振り返ったと同時にAちゃんが床に座り込む。
「大丈夫?」
『ありがとう。来てくれて…』
しゃがんで顔を覗き込むと、Aちゃんの目から涙が零れた。
怖かったよな。
なんで気付いてやれなかったんだろう。
分かってるようで何にも分かってないじゃん俺。
Aちゃんの気持ちもこんな形で知ることになるなんて…
「俺も、好きだよ。Aちゃんのこと」
もう絶対こんな想いさせないから。
これからはどんな事があってもAちゃんを守ってみせる。
そう誓って、キスをした。
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Aと付き合い始めて数週間。
帰宅すると玄関の前にAがいた。
時間的にバイトを終えてそのままうちに来たんだろう。
「なんだよ。言ってくれればもっと早く帰ってきたのに」
今日はフットサル終わりにみんなでファミレスに寄ったから、いつもより遅い帰宅だった。
『今日、泊まっていい?』
「いいよ」
Aの家の事情は大体聞いていた。
またどっかのおっさんが家にいて帰りづらいんだろうな。
バイトに行くのに家を出た時点で泊まるつもりだったらしく、着替えが入っていると思われる大きなバッグを抱えていた。
「そろそろ寝ようか」
ゲームをしている俺の横で絵を描いていたAの手が止まっていた。
『うん』
頷いて小さい欠伸をする。
「何描いてたの?…海だ」
だけど、前に2人で学校サボって行った海とは違う感じ。
「明日どっか行く?また海でも行く?」
狭いベッドの中で身体が密着する。
明日も明後日も休みだし、こうやってのんびりしてるのもいいけど。
『海…
だけど、こないだのとこじゃなくて、行ってみたいところがあるの』
「いいよ。どこにでも付き合う」
軽く額にキスして、灯りを消した。
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なのはなさいた(プロフ) - 初めて読ませて頂きました!すごく面白いです!楽しませていただいてありがとうございます!! (2020年6月5日 0時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - 大変失礼致しました。 (2020年5月9日 20時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ラークさん» 申し訳ありませんが、そちらの作品は私の作品ではございません。 (2020年5月9日 18時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - こちらからすみません。Secret Love、シゲアキ先生と恋をします、のパスワードを教えていただけますか?よろしくお願いします。 (2020年5月9日 17時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 彩耶さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!また機会があればよろしくお願いします。 (2020年3月10日 2時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年2月10日 13時