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「もうバレたっていいんだよ」
その意味を知ったのは、それからしばらく経ってから。
掲示板に貼られた辞令を見て呆然としている私に、ゆきちゃんが声をかけてきた。
「加藤課長って、社長の甥っ子だったんだってー。
あ、Aは知ってたか」
─────────
企画課課長 加藤シゲアキ
新会社 取締役社長
来月1日より新社準備室へ異動
─────────
『知らない…』
いや、事業の一部を子会社化するのは噂で聞いていた。
でも、その子会社の社長が加藤さんだとは聞いてない。
なんで?
何にも言ってなかったじゃん。
社長と菫さんのこととか、私にだけ教えてくれたのに。
なんでこんな大事なこと、教えてくれなかったんだろう。
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「新しい会社の発足自体はもう少し先だけど、来月から準備が始まるみたい」
色々聞こうと思ったのに、今日に限って企画課のオフィスに加藤さんはいなくて、その代わりに隣の先輩が教えてくれた。
「次は誰がうちの課長になるのかなー」
次の課長なんて、加藤さん以外誰がなったって同じだよ…
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加藤さんが現れたのは始業後だったから、昼休みに捕まえようと思ったらいつの間にかいなくなっていた。
こういう時はカンが冴えてるらしく、ピンと来て屋上に行ってみたら大正解。
一人佇む後ろ姿を見つけた。
「何?寂しいの?」
こういう時に限って、何笑ってんだか…
『寂しいです』
「珍しく素直じゃん」
こんな事なら、まだお金返さないでいた方が離れてもまだ繋がっていられただろうか。
「いいでしょ。俺がいなくなったら自由だよ。
Aを企画課に引っ張って来たのは俺だし、営業三課に戻るってんなら人事に話しとく」
『戻らないです』
いなくなっちゃう上になんでそんな寂しいこと言うかな。
「それは助かる。
Aがいてくれれば安心だな」
私の頭に軽く触れて、加藤さんは1人で戻って行った。
置いてかれるんだ…
そう思ったら涙が出てきた。
あの日加藤さんに見つかって、企画課に来て、一緒に仕事して、これからもずっと一緒にいるんだろうなって何故か思い込んでいた。
定期的に人事異動はあるから、ずっと一緒なわけないのに。
それでも加藤さんは、私をこき使って無茶振りして振り回し続けるんだろうと思ってた。
別に嫌じゃなかった。
むしろ最近は、それが楽しくて仕方なかったのに。
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まり(プロフ) - 花希音*☆さん» コメントありがとうございます(*^^*)最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月10日 1時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - とくこさん» 最後までお読み頂きありがとうございました(*^^*)また別の作品でもお付き合い頂けたらと思います! (2020年2月10日 1時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
花希音*☆(プロフ) - きゃっ!!好きです!このお話! (2020年2月8日 7時) (レス) id: e44d981289 (このIDを非表示/違反報告)
とくこ(プロフ) - 初コメント失礼します。完結お疲れさまでした!わくわくしながら読むのが日課だったので"完結"の文字がなんだか少し寂しく感じました。ありがとうございました! (2020年2月8日 2時) (レス) id: 5750580c47 (このIDを非表示/違反報告)
NEWSLove萌(プロフ) - はい!加藤さんと結ばれることも応援してます!頑張って下さい! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 0c8bb4e7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年1月5日 21時