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「A。一緒に行こうよ、これ」
次の日ゆきちゃんが差し出してきたのは、抽選で当たったという試写会のペアチケットだった。
木曜の夜か。
でも、先週頑張った分今週はそこまで遅くならなそう。
何より、タダだし。
『うん。行こう』
そういえば、企画課に来てからゆきちゃんとご飯とか行ったことあったかな…
なんて、ふと思ったりもしながら約束をして、仕事に取り掛かった。
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木曜日。
課長は定時で退社して、一番懸念していた課長からの急な仕事のフリも無く、無事にゆきちゃんと一緒に映画館に辿り着くことが出来た。
観たかった映画ってわけじゃないし、内容も特に興味を引くものじゃなかったってことは流石にゆきちゃんには言えなかったけど、
「イマイチだったなー」
ゆきちゃんもちょっと残念そうだった。
『そう?こういうジャンル、自分からはあまり観ないから新鮮だったなー』
「やっぱこっちだよねー」
ゆきちゃんが隣のシアターの看板を指差す。
今話題の外国映画だった。
「ねえねえ、観てく?
レイトショーこれからだよ?」
ちょうど、一つ前の回を観終えた人たちが続々と出てきていたところだった。
『うーん…』
困ったな。
確かに気になってた映画だけど、明日も仕事だしこれから映画もう一本はキツい。
しかも一層節約しようって思ってたとこだった。
でも、ゆきちゃんと映画なんて今度いつ来られるか分かんないし…
「あ…」
ん?
急に動きを止めたゆきちゃんの目線の先を見て、驚いた。
シアターから出てきた人の流れの中に課長がいた。
もちろん、婚約者のお嬢様も一緒。
『出よ?』
こんなところで出くわすなんてごめんだ。
向こうに気付かれる前にゆきちゃんを引っ張って映画館を離れた。
「でもさ…
10歳くらい課長の方が上だけど、お似合いだよね?あの二人」
『そうだね…』
少し歩いた所で、そういえば電源切ったままだった、ってゆきちゃんがバッグからスマホを取り出した。
「あ、LINEだ。
ねぇ、渡部くんたちこの近くで飲んでるんだって。行こうよ」
渡部くんというのは、営業二課にいる私の同期だ。
飲みになんて行ったら映画観るより全然お金かかるけど…
でも、半ば強引にもう一本映画を観たかったゆきちゃんを連れて映画館を出てしまった。
仕方ない。
明日からもっともっと節約だ。
渡部くんたちがいるという居酒屋は、そこから歩いて5分もかからない場所だった。
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まり(プロフ) - 花希音*☆さん» コメントありがとうございます(*^^*)最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月10日 1時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - とくこさん» 最後までお読み頂きありがとうございました(*^^*)また別の作品でもお付き合い頂けたらと思います! (2020年2月10日 1時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
花希音*☆(プロフ) - きゃっ!!好きです!このお話! (2020年2月8日 7時) (レス) id: e44d981289 (このIDを非表示/違反報告)
とくこ(プロフ) - 初コメント失礼します。完結お疲れさまでした!わくわくしながら読むのが日課だったので"完結"の文字がなんだか少し寂しく感じました。ありがとうございました! (2020年2月8日 2時) (レス) id: 5750580c47 (このIDを非表示/違反報告)
NEWSLove萌(プロフ) - はい!加藤さんと結ばれることも応援してます!頑張って下さい! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 0c8bb4e7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年1月5日 21時