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部屋は真っ暗だけどうっすらと月明かりに照らされて、Aが俺と同じ白いバスローブを纏っているのがわかった。
『ごめん、お待たせ』
「早く来なよ」
『うん…』
掛け布団が捲られて、Aがベッドに入ってくる。
シングルベッドだから身体が密着して、バスローブ越しでもAの体温をちゃんと感じた。
まだ微かに湿ってる髪を手で梳いて、唇を塞ぐ。
バスローブの中に手を滑らせて直接胸に触れると、Aは甘い吐息を漏らした。
「ねぇ、さっきみたいに呼んでよ。名前で」
『ゆう、や…』
あー、ダメだ。
そんなため息混じりに名前なんか呼ばれたら、俺、もう無理。
「A。大好きだよ、A」
『私も、好き…』
「ほんと、かわいい」
Aのバスローブの結び目を解いて一気に肌蹴させると、俺もバスローブを脱ぎ捨てて、Aの上に覆いかぶさった。
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え?今何時?
いつの間に眠っていたのか。
気が付くと外は明るくなっていて、俺は1人でシングルベッドに横たわっていた。
「A?」
半分開いたドアから見えるリビングに、Aの後ろ姿を見つけて声をかける。
『祐也?起きたの?
もうすぐ6時だけど、そろそろ行く?』
「…そうだね」
ずっとここにいたいけど、そんな訳にはいかない。
そもそもこの国には仕事で来てるんだし、勝手にホテルを抜け出してきてるし。
気怠さを感じながらも起き上がって、バスローブを羽織って、Aの元へ移動する。
「おはよ。随分早起きだね。
当分起きれないくらい抱いたと思ったのに、まだ足りなかった?」
華奢な背中を抱きしめて後ろからうなじにキスすると、Aはくすぐったそうに身をよじった。
『そんなことないよ。私もついさっきまで寝てたし』
「てか、アイロン掛けてくれてんの?」
Aは俺の服にアイロン掛けしてた。
『こっちの水道水は硬水だから、洗濯物がバキバキになっちゃうの。
だから、下着もぜーんぶアイロン掛けるのが普通なんだよ。
はい。どうぞ』
昨日シャワーを浴びた後、洗ってくれていたらしい。
Aが渡してくれた俺の服はパンツも靴下も全部、アイロン掛けたてでホカホカだった。
改めて時間を確認する。
マジでもう行かないとな。
で…俺は明日、日本に帰るんだ…。
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作者名:まり | 作成日時:2019年10月15日 1時