ΨBootis☆Y☆ (ページ8)

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手を繋いだまま、タクシーの列に背を向けて歩き出した。

『うち、来る？』

「行きたい」

『明日の朝まで大丈夫なら、私が送ってくから。朝になればアルコール抜けてるだろうし』

それはつまり、今夜はAさんの家に泊まるってことでいいの？

「じゃあ、頼むわ。明日の朝…」

指を絡める形に手を繋ぎ直すと、少し俺の方に寄ったAさんが俺の腕に触れて、元々アルコールが入って火照り気味だった身体が更に熱くなった。

そこから5分もかからずに到着したAさんのマンションは、日本の団地みたいなコンクリートの建物の1室だった。

『うちは日本式にしてるから』

って靴を脱いだAさんに続いて、自分も出されたスリッパに履き替えて部屋の中に入る。

綺麗に片付いていて余計な物がないからそう見えるのか、外から見るよりずっと広く感じた。

『適当に座って？』

促されるままソファに座ると、Aさんは冷蔵庫から取り出したペットボトルのミネラルウォーターを差し出してきた。

『水でいい？ビールにする？』

「いや…」

首を横に振ってペットボトルを受け取る。

「Aさんも座ってよ」

水を一口飲んで隣を指さすと、自分のソファだってのに、随分と遠慮がちに俺との間に少しスペースを開けて座った。

『うちに誰かがいることなんてないから、なんか緊張しちゃう』

なんなら俺も多少は緊張してるけど、いつまでも2人でソワソワしてたってしょうがない。

距離を詰めて座り直して、さっきみたいに恋人繋ぎで手を握った。

ふわっと甘い匂いがして、サラサラの黒髪が俺の肩に触れる。

空いている手で髪を撫でると、自然とソファに座ったまま向き合うような体勢になった。

思いきり近距離で目が合って、引き寄せられるように唇が重なる。

数回繰り返されたキスは徐々に深くなって、そのままソファに倒れ込んだ。

昨日出会って、ご飯行って、もう泊まりに来ちゃってるとか。

さすがに俺でも普段ならこんなにさっさと進めたりしないよ？

しかも、相手がこんなに素敵な人なら尚更。

ここが東京だったら、もっと時間かけて大事に関係を築いてこうとしただろう。

だけど、ここは日本から遥かに遠くて、しかも俺には時間が無さすぎる。

だからって諦めるなんて選択肢はもはや俺の頭の中には無かった。

「ねぇ、明後日まででいい。
あと2日だけ、

…俺の彼女になって」