ΨBootis☆Y☆ (ページ3)

今日:4 hit、昨日:11 hit、合計:25,221 hit

3. ページ3

.

「Aさん。…なんで？」

『良かったぁ。もうホテルに戻っちゃったかと思った。
はい、これ。車に忘れてましたよ』

差し出されたのは、俺のサングラスだった。

「あー！すいません。わざわざこれ届けるために戻ってきてくれたんですか？」

そういえば、車の中で外してそのまま置いてきてたのかも。
でも、無いって全然気付いてなかった。

『無いと困るかなって思って』

「助かります。ありがとうございました」

明日も朝から外に出る予定だったから、正直今届けてもらって助かった。

リュックからケースを取り出すのが面倒だったから、夜だけどとりあえずかけといた。

『よく似合ってる』

俺を見て微笑んだ表情にキュンとしてしまった。

「手越くん。お待たせ…あれ？」

すっげータイミング悪くスタッフが現れた。

しかも、怪訝そうな顔でAさんを見ている。

『じゃあ、私はこれで』

状況を察知してくれたようで、Aさんはスタッフに軽く頭を下げて、俺には控えめに手を振って、帰る人達の波に乗って歩き出した。

「あとで連絡するから」

これで終わりっていうのがなんか嫌で、思わず後ろ姿に声を掛けると、振り返ったAさんは何も言わずにもう一回笑顔で手を振って、帰って行った。

「誰？」

「ん？ああ。
友達の姉ちゃん。たまたま会って」

咄嗟に誤魔化したけど、スタッフは信じてくれた様だった。

「こんなとこで？そんな偶然あるんだね」

「なー？ほんと、ビックリだわ」

「綺麗な人だったね」

「…でしょ？」

正直、こいつにAさんことを綺麗とか言われるのはなんだかいい気分がしなかったけど、そこで否定する訳にもいかず、頷いた。

「てっきり手越くんがナンパでもしたのかと思ったよー」

冗談ぽく笑って、スタッフは歩き出す。

「んなわけないっしょ」

ナンパではないけど、さっき知り合ったばっかり、とは絶対言えないと思った。

それにしても、この人が来るのがもうちょっと遅かったらもっと話せそうだったのにな。

ホテルに向かう車中、さっきもらったAさんの名刺をこっそり眺めていた。