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バッグのポケットから取り出した名刺を見つめる。
ほんと、なんで今まで気付かなかったんだろう。
─────
「手越が恋愛絡みでここまで思い詰める事なんてあるんだ。
よっぽど素敵な人なんだね」
「間違いなく、今まで出会った人の中で1番好きだわ」
「そうなんだろうね…」
全てを話すと、小山はそんな運命的でしかもそこまで急展開なことがあるのかってとにまず驚いて、それから、女絡みで俺がここまで悩むのが意外だと言った。
だけど結局、ちゃんと話を聞いて一緒に悩んでくれる。
「何があったんだろうね。
手越が飛行機乗ってる十数時間の間に…」
「自分から番号とアドレス変えたんだろうから、倒れたとか事故ったとかではねぇんだろうな、とは思ってるけど」
治安がいい国だし、事件に巻き込まれたとかも考えにくい。
やっぱ嫌になったのかな。
遠距離が面倒になったとか。
小山はビールを一口飲んで、少し考えて「でもさ」って、口を開く。
「絶対嫌いになったとかでは無いでしょ。
多分、手越に負担掛けたくないからとか。
アイドルっていうのを気にしちゃったとか？」
「…かな」
でも、それを確かめる手段が無い。
当分連休は取れそうもないから直接会いにも行けないし。
「会社は？彼女の。
会社の名前分かればそこから連絡先探せないかな」
「あっ」
そこで、何故か今まですっかり忘れていた事を思い出した。
初めて会った日、何か困った事があったら連絡してとAが会社の名刺をくれたんだ。
えーと、何処だっけ。
財布の中を探してみたが見当たらない。
あー、多分あれだ。
サッカー見に行った時に持ってたバッグの中。
.
帰宅してバッグを探すと、それは直ぐに見つかった。
会社名と電話番号、職場のAのパソコンのものと思われるメールアドレス。
裏に手書きで書かれたAのプライベートの携帯番号とメールアドレスは、今はもう使われてない。
時差は8時間。
向こうは14時。
まだ全然会社にいる時間じゃん。
思い切って、番号をタップした。
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作者名：まり
| 作成日時：2019年10月15日 1時
