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『朝になっちゃったね』
「だなー」
別れを惜しむように、どちらからともなく身体を寄せ合う。
『そろそろホテル戻らなきゃだよね？』
「Aも仕事でしょ？」
『うん』
一度キスをして、ベッドから出た。
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すっかり乗り慣れたこの車の助手席もこれが最後。
ハンドルを持っていない方のAの手をずっと握っていた。
『眠い？』
赤信号で停車すると、Aは俺の顔を覗き込んでくる。
「いや…」
多分、俺があまり喋んないから。
そりゃ口数も少なくなるわ。
いくら俺でもこの状況で、テンションが上がるわけない。
『後悔してる？出会ったこと』
「してないしてない」
慌てて首を振る。
『良かった。
私も、祐也と出会って良かったって思ってるよ。もうちょっと一緒にいたかったけど…』
それはもちろん俺も同じ。
とにかく時間が無さすぎて、何もかもあっという間だった。
まぁそれは最初からわかった上で、それでも一緒に過ごすことを選んだんだけど。
大した距離じゃない上に早朝だから交通量が少なくて、あっという間にホテル近くの宮殿前に到着してしまった。
「ありがと」
とりあえず送ってもらったことへのお礼を伝えて、シートベルトを外す。
車から降りたら、俺たちの関係は終わる。
『こちらこそ、本当にありがとう。
まさかこっちで日本の人と仲良く慣れるなんて思ってなかった。
しかも彼氏になってくれるなんて…』
「大好きだよ、A」
『うん。私も大好き』
これで本当に最後のキス。
ずっと忘れないように、Aの唇の感触をしっかりと焼き付けた。
『じゃあね。お仕事頑張って。応援してる』
「Aも。こっちで色々大変なこともあるだろうけど、頑張って」
何気に大好きだったサラサラの黒髪を撫でて、車を降りた。
『じゃあねー、本当にありがとう』
また来週あたり普通に会うんじゃないかっていうくらい、Aはあっさりと笑顔で手を振っていなくなった。
Aの車がすっかり見えなくなると、急に涙が溢れてきた。
俺はちゃんと笑ってお別れ出来てたかな。
Aはもう俺のことより、今日の仕事のことでも考えてるんだろうか。
涙は止まるどころかどんどん溢れてくる。
俺にとって、たった2日間の恋人との別れは思ってた以上のダメージだった。
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作者名：まり
| 作成日時：2019年10月15日 1時
