ΨBootis☆Y☆ (ページ14)

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「日本には戻らないの？」

ソファでピッタリくっついて、サラサラの黒髪を指で梳く。

テレビではさっきからドラマらしきのが放送されてるけど、現地語は全くわからないし全く頭に入ってこない。

『どうかな。
2年ごとの契約だから、少なくとも来年まではこっちにいると思うけど』

「そっか…」

ほんとは2年で帰るんだったけど希望して残ってるって言ってたもんな。

日本には戻りたくなさそうな事も言ってたけど、そう言えば詳しく聞いていなかった。

「こっちに来たのもAの希望なんでしょ？」

『そう。
こっちに出向する社員を募集してたから、立候補して…
恥ずかしい話なんだけどね？その時ちょうど同じ会社にいた彼氏と別れたばっかりで。とにかくそこから離れたかったの』

なるほどね。
もしかしたらそんな事かな、とか思ってはいたけど…

「それで、戻りたくなかったんだ」

『うん。
でもね、今は別にもういいかって思っちゃってるんだ。
多分、祐也に出会ったからで…』

その先を聞きたいような聞きたくないような。

俺、マジで日本に帰りたくなくなっちゃうかも。

『こっちに来てからも、友達もいないし言葉もあまり通じないし、結局家に1人でいると元彼の事ばっか考えちゃって。
でも、今はそれが信じられないくらい、元彼のことなんてどうでも良くて…』

Aの言葉を遮るように、唇を塞ぐ。

「でも、明日からまた…」

明日からの事なんて考えずに、今日はひたすら愛し合って幸せ気分に浸ろうって思ってたのに。
こんな寂しい話するつもりはなかったのに、言わずにはいられなかった。

明日からAがここで1人で何考えてようが知らない、なんて思わないし。

だけどAは

『おかげさまで、もう大丈夫。
1人でも平気だよ』

はっきりと言い切った。

2日間だけの恋人なんて言い出したのは自分だけど、明日俺が日本に帰ってそれで終わりとか割り切るのはやっぱり無理かもって思い始めてた。

だけど…

『私も一緒に日本に帰る』とか言い出してくれはしないだろうかと、実はどこかで思ってたけど、Aは何事も無かったかのように明日からも普通にこっちで生きてくんだろう。

やっぱり今しかない。

ありもしない未来のことなんて考えてないで、今のAとの時間を大事に過ごさないと。

深いキスをしてソファに倒れ込む。

窓の外が白んでくるまで、ほぼ眠ることなく2日間だけの恋人を愛し続けた。