23. ページ23
.
Aの家の中は、俺の想像とは全く違っていた。
てっきり仏壇があって、位牌と遺影があって、花が飾られて…
と思っていたけど、それらはどこにも見当たらなかった。
唯一、テレビの横にフォトスタンドが置かれていたが、それも帰るなりAが引き出しの中に閉まってしまった。
『外、結構寒かったよね。ごめん、うちコーヒーないから』
Aは紅茶の缶を出してお湯を沸かし始めるけど、今はそんなのどうでもいいから早くこっちに来てほしい。
待ちきれなくなって、後ろから抱きしめた。
『どうしたの?』
どうしたのって。
目の前にAがいて、しかも今は誰かに見られる心配もない。
こうせずにはいられないに決まってんじゃん。
声に出して伝える代わりにキスで伝えた。
「好き…」
これはちゃんと、何度でも伝える。
『私も、好きだよ』
Aからの不意打ちのキスが来た。
.
『晴れて星が見える日はずっと空を見てた。星を見てたら、あの人の声が聞こえてくる気がしたから』
本音を言えばあまり触れたくない話題だったけど、これからAと過ごしていくには避けられない話。
『ついこの間まで、遺骨も埋葬出来ずにここに置いてた。
旦那の両親からはずーっと、位牌も遺骨もこっちに持ってきてAちゃんは早くいい人見つけなさいって言われてたけど、そんなの無理でしょ?
初めて付き合った人だったし、何の覚悟も出来ないまま急にいなくなっちゃったし…』
俺の手に触れてきたAの手を、しっかり握りしめた。
『他の誰かを好きになるわけがない、これからは一生一人なんだって思ってたの。
…シゲアキに会うまでは。
芸能人をあんな間近で見たのは初めてで、しかもプライベートでも来てくれて…
一度気になり出したら、仕草も話し方も全部好きで。考えれば考えるほどどんどん好きになって…私、わかり易すぎるみたいでマスターにはバレバレだったんだけど』
「マスターもAのこと随分心配してたみたいだもんな。
Aには次に進んで幸せになってほしいって言ってた」
『え?いつの間に?マスター、シゲアキにそんなこと言ったの?』
「言ったね」
そして、俺を見て意味ありげに笑ったんだ。
Aだけじゃなく俺の気持ちも、マスターにはバレバレだったってことか。
『私、今はこの人のそばにいたいって思えたから、一周忌の時、義両親に伝えたの。
いい人見つかったかもって』
112人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まり(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます☆全部読んで頂いてるなんて、嬉しすぎます!温かいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります。 (2019年10月12日 0時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆか - 初コメですが、、以前から、コッソリとまりさんの作品大好きで、全て読ませて頂いております!低評価の件ですが、どうか気にする事なく、まりさん自身ムリのないよう更新頑張ってください!楽しみにしております(^^)/ (2019年10月11日 3時) (レス) id: 58f4b53075 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ○○さん» コメントありがとうございます☆私の作品を見つけて頂いてありがとうございます。だいぶ元気がでてきましたので、最後まで頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ひなさん» コメントありがとうございます☆年上彼女がマズかったのか、と悔いていたので少し安心しました。確かに、誰かが評価してくれると直後に低い点を入れられる、と言うのが続いていたんです…最後まで頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - りんりんごさん» コメントありがとうございます(^-^)温かいお言葉、励みになります。最後まで更新頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まり | 作成日時:2019年9月20日 3時